「運転手さんにも空いた時間にビラを配ってもらおう」「お手伝いの人に、選挙カーから手を振ってもらおう」。選挙期間中、人手が足りない陣営ほど、こうした役割の掛け持ちを考えがちです。ところが公職選挙法では、特に報酬を受ける人について、担当できる仕事に制限があり、知らずに頼むと違反になることがあります。
また、選挙期間中は、選挙カーの表示板や運動員の腕章、街頭演説の標旗など、選挙管理委員会から交付される「しるし」をつけて活動するのがルールです。
この記事では、選挙期間中の運動員の決まりごとを、役割ごとの「できること・できないこと」と、選管から交付されるものに分けて整理します。
※2026年11月時点の情報です。交付される物の種類や数、細かな扱いは選挙の種類によって異なります。必ず立候補する選挙の選挙管理委員会の手引きで確認してください。
報酬を払って頼む選挙カーの運転手は、法律上「労務者」という扱いになります。労務者は、運転や荷物運びなどの機械的な作業に対して報酬を受け取る人なので、選挙運動をすることはできません。

報酬を払う運転手は運転に専念。ビラ配りは別の運動員が担当します(イメージ)
こうしたことを報酬を受けている運転手がすると、選挙運動に対して報酬を払ったことになり、買収とみなされるおそれがあります。報酬を払う運転手には、運転に専念してもらいましょう。
一方、報酬を受け取らないボランティアの運転手であれば、運転以外の選挙運動もできます。ただし、運転の安全や選挙カーの上での行為の決まりは別に守る必要があります。また、交通費・宿泊費などは選管の基準の範囲で実費弁償できますが、それ以外にお礼のお金を渡すと、やはり問題になります。1人の人について、報酬を払う仕事と無報酬の仕事を混ぜないようにしましょう。誰に報酬を払い、誰が無報酬なのかを、陣営の中ではっきりさせておくことが大切です。報酬のルールは「ウグイス嬢・事務員・ボランティアの報酬ルール」でくわしく解説しています。
選挙期間中に陣営で働く人は、報酬の有無と役割によって、次のように分かれます。
| 役割 | 報酬 | できること | できないこと |
|---|---|---|---|
| 車上運動員(ウグイス嬢など) | 届け出れば払える(上限あり) | もっぱら選挙カーの上での連呼・候補者の紹介 | 報酬の区分をまたぐ兼務(運転手を兼ねるなど) |
| 事務員 | 届け出れば払える(上限あり) | 選挙事務所での事務(受付、連絡、書類作成、物品管理など) | 電話での投票依頼、ビラ配りなどの選挙運動 |
| 労務者(運転手・ポスター貼りなど) | 払える(上限あり) | 運転、ポスター貼り、機械的な宛名書きなどの単純な作業 | ビラ配り、連呼、投票依頼などの選挙運動 |
| ボランティア(無報酬の運動員) | 払えない(実費弁償は可) | 街頭演説の手伝い、ビラ配り、電話での投票依頼など | 戸別訪問など、誰にも禁止されている行為 |
ここでいう報酬には、法律で認められた一部の選挙運動従事者に払う報酬と、運転やポスター貼りなどの単純な作業に払う報酬があります。選挙運動そのものへの報酬は原則として禁止で、法律で決められた事務員・車上運動員・手話通訳者・要約筆記者などに限り、届出などの条件を満たせば払えます。単純な作業をする労務者にも、基準の範囲で報酬を払えます。上限額は、事務員が日額15,000円、車上運動員などが日額20,000円、労務者が基本日額10,000円などとされています(選挙ごとの基準で確認してください)。
とくに注意したいのが、事務員と労務者です。報酬を払う代わりに、選挙運動はできません。「事務員として届け出た人に、街頭でビラを配ってもらう」といった使い方は避けましょう。
また、18歳未満の人は選挙運動ができません。高校生の子どもや親戚にビラ配りや呼びかけを頼むことはできないので注意してくださいポスター貼りや機械的な事務などの単純な作業を手伝ってもらうことはできますが、投票のお願いや選挙カーからの呼びかけはできません。
運動員への報酬をめぐる違反は、毎回の選挙で摘発されています。2026年2月の衆院選でも、次のような事件が報じられました。
例1:車上運動員に上限を超える報酬
近畿地方の選挙区から立候補し落選した元職の陣営で、車上運動員に法定の上限(1日2万円)を超える報酬を払っていたとして、候補者の秘書だった男性と、報酬を受け取った車上運動員が書類送検されました。その後、元秘書と車上運動員の双方が略式起訴され、それぞれ罰金50万円などの略式命令を受けました。選挙後に提出した収支報告書には、上限内の金額が書かれていたと報じられています。
例2:ビラ配りの学生に日当
首都圏の選挙区から立候補し落選した候補の陣営で、大学生などにビラ配りなどの選挙運動を頼み、11人に計46万円の報酬を払ったとして、2026年7月27日、東京地裁は陣営の関係者2人に執行猶予つきの有罪判決を言い渡しました。候補者本人も別に起訴されていますが、判決は出ていません(同月時点の報道)。報酬を受け取った学生も、当時、事情を聴かれたと報じられています。
どちらも、「払ってよい人に、上限を超えて払った」「そもそも払ってはいけない人に払った」という、この記事で説明しているルールの違反です。運動員買収は、報酬を払った人だけでなく、受け取った人も処罰されることがあり、手伝ってくれた人を巻き込むことになります。また、選挙運動の総括主宰者・出納責任者・地域主宰者が買収などで罰金以上の刑になった場合や、一定の親族・秘書・組織的選挙運動管理者などが拘禁刑になった場合には、連座制の対象になることがあります。連座制が適用されると、候補者が当選していても当選が無効になり、原則として5年間、同じ選挙区で同じ公職の選挙に立候補できなくなります(秘書という肩書だけで自動的に適用されるわけではありません)。
報酬を払うときは、担当する仕事、働いた日、金額、届出の有無を記録し、領収書を保存しておきましょう。選挙運動費用収支報告書の内容と一致するよう管理することが、自分と運動員を守ることにつながります。
選挙カー(選挙運動用自動車)には、乗れる人数にも決まりがあります。候補者と運転手1人のほかに乗れるのは、乗車用腕章をつけた4人までです。
選挙カーの交通ルールについては「選挙カーに許される交通ルールとは?」も参考にしてください。
選挙期間中、陣営が使うさまざまな物には、選挙管理委員会から交付される表示板や腕章などをつける必要があります。立候補の届出が受理されると、まとめて交付されるのが一般的です。地方議会議員選挙・市区町村長選挙の主なものは次のとおりです。

標旗・腕章・表示板・証紙など、選管から交付されるもの(イメージ。種類や数は選挙によって異なります)
| 交付されるもの | 使う場面 | ポイント |
|---|---|---|
| 選挙運動用自動車の表示板 | 選挙カー | 車の前面など外から見やすい場所に掲示する |
| 拡声機の表示板 | 選挙カーや街頭演説で使う拡声機 | 拡声機に取り付けて使う |
| 乗車用腕章 | 選挙カーへの乗車 | 候補者と運転手1人を除く乗車者(4人以内)がつける |
| 標旗 | 街頭演説 | 街頭演説は、標旗を掲げた場所でしかできない |
| 街頭演説用の腕章 | 街頭演説を手伝う運動員 | 街頭演説に従事できるのは、候補者と運転手1人を除いて15人以内。乗車用腕章をつけた人もこの人数に含む。腕章の内訳は選管の手引きで確認する |
| 選挙運動用ビラの証紙 | 選挙運動用ビラ | 届け出たビラに、交付された証紙を貼ってから配る(選挙運動用はがきには証紙はなく、郵便局で手続きする) |
なお、選挙事務所の入口に掲げる選管交付の標札は、国政選挙や知事選挙などで必要なもので、地方議会議員選挙・市区町村長選挙では原則として交付されません。数や種類は、選挙の種類によって違います。なくしたり壊したりしたときの再交付の手続きも、選挙管理委員会の手引きで確認しておきましょう。告示日の朝は、交付された物を受け取ってから、それぞれの担当者に配るまでの段取りを決めておくと、出陣式のあとスムーズに動き出せます。ただし、告示日になっただけで選挙運動を始められるわけではありません。立候補の届出が受理されたことを確かめ、表示板・腕章などをつけてから活動を始めましょう(「出陣式・事務所開き・マイク納めの進め方」)。
役割にかかわらず、選挙運動をする人が守らなければならないルールもあります。お手伝いの人には、最初に一度まとめて伝えておきましょう。
運動員のルールは、選挙期間に入ってから説明していては間に合いません。告示の前に、次のことを決めておきましょう。
人手の少ない陣営の役割分担は「人手の少ない無所属陣営の選挙期間の回し方」でも紹介しています。
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「政治経験なしの新人候補として戦う 地方選挙ハンドブック」(全18ページ)を無料で配布しています。告示前と選挙期間中でできることの早見表や、陣営づくりの考え方もまとめています。
役割と名簿を早めに固めておけば、告示日当日の混乱もかなり減らせます。
A. 報酬を受け取らない家族のボランティアであれば、運転以外の選挙運動もできます。報酬を払う運転手(労務者)は選挙運動ができない、という点が違います。ただし、18歳未満の家族は選挙運動ができません。
A. 報酬を払う車上運動員は、もっぱら選挙カーの上で選挙運動をする人という扱いです。運転手(労務者)との兼務は報酬の区分をまたぐことになるので避け、役割を分けましょう。迷うときは選挙管理委員会に確認してください。
A. いいえ。表示板・腕章・標旗などは、選挙管理委員会から交付されたものを使います。自作のものでは代わりになりません。
A. 候補者の名前入りのたすきやのぼりは、運動員が自由に使えるものではありません。選挙カーへの取り付けなど法律で決められた例外を除き、使う前に必ず選挙管理委員会に確認してください(「街頭演説・辻立ちのルール」)。
人手が限られる選挙期間中は、運動員の役割分担だけで手一杯になりがちです。株式会社ハレフルは、公職選挙法を踏まえ、つど選挙管理委員会にも確認しながら、選挙期間中のSNS・ショート動画の撮影・編集をお手伝いしています。
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