選挙カーでマイクを握るウグイス嬢(車上運動員)、選挙事務所で電話や受付をする事務員、ポスター貼りやビラの折り込みを手伝ってくれる人たち。選挙は多くの人の力で動きますが、誰にいくら払っていいのかは、公職選挙法で細かく決められています。
選挙運動をした人に報酬を払うことは原則として禁止されていて、違法な支払いは買収罪に問われるおそれがあります。決められた人に、決められた範囲で払う場合だけが例外です。選挙スタッフへの支払いは、「報酬」「労務の対価」「実費弁償」の3つに分けて考えるとわかりやすくなります。この記事では、払える人・払えない人、上限額、届出、ボランティアへの交通費や弁当の扱いまでを整理します。
※2026年10月時点の情報です。報酬の上限額は2025年の政令改正で引き上げられ、実際の額は選挙ごとに選挙管理委員会が告示します。必ず、立候補予定者説明会の資料で確認してください。
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| 区分 | どんな人 | 報酬 |
|---|---|---|
| 車上運動員(ウグイス嬢など) | 選挙カーの上で、もっぱら連呼や演説をする人 | 払える(届出が必要) |
| 事務員 | 選挙事務所で、受付・問い合わせ対応・名簿整理・発送準備などの事務をする人(電話で投票を頼むのは選挙運動) | 払える(届出が必要) |
| 手話通訳者・要約筆記者 | 演説などで、もっぱら手話通訳・要約筆記をする人 | 払える(届出が必要) |
| 労務者 | ポスター貼り、ビラの折り込み、選挙カーの運転、看板の設置など、選挙運動ではない機械的な作業をする人 | 払える(届出は不要) |
| 選挙運動員 | 投票を呼びかける、電話作戦をする、街頭で演説を手伝うなど、選挙運動そのものをする人 | 払えない(ボランティア) |
ポイントは、「選挙運動をする人」には原則として払えないということです。例外として認められているのが、車上運動員・事務員・手話通訳者・要約筆記者の4つです。労務者は、選挙運動ではなく作業をする人なので、報酬を払えます。
| 区分 | 1人1日の上限 |
|---|---|
| 車上運動員・手話通訳者・要約筆記者 | 20,000円 |
| 事務員 | 15,000円 |
| 労務者 | 基本日額10,000円+超過勤務手当(基本日額の5割まで) |
上限額は国の政令で決まっていて、2025年6月の改正で引き上げられました(車上運動員は15,000円から20,000円へ、事務員は10,000円から15,000円へ)。実際の額は、この上限の範囲で選挙管理委員会が告示します。
車上運動員・事務員・手話通訳者・要約筆記者に報酬を払える人数は、選挙の種類ごとに、1日あたりの上限と、選挙期間全体で届け出られる人数の上限(1日の上限の5倍)が決まっています(公職選挙法施行令第129条)。同じ人が何日働いても、届出の人数は1人と数えます。
| 選挙の種類 | 1日あたり | 期間全体(異なる人の数) |
|---|---|---|
| 都道府県議選 | 12人 | 60人 |
| 政令指定都市の市議選 | 12人 | 60人 |
| 一般の市議選・区議選 | 9人 | 45人 |
| 町村議選 | 7人 | 35人 |
| 一般の市長選・区長選 | 12人 | 60人 |
| 町村長選 | 9人 | 45人 |
労務者には人数の制限はありません。正確な人数は、選挙管理委員会の資料で確認しましょう。
車上運動員・事務員・手話通訳者・要約筆記者に報酬を払うには、あらかじめ選挙管理委員会に届け出る必要があります。届け出ていない人には、報酬を払えません。
報酬を払えない選挙運動員(ボランティア)にも、かかった費用を補う「実費弁償」は払えます。上限は選挙管理委員会が告示します。実際にかかった額を超える定額の「日当」や「謝礼」は払えません。自家用車を使った場合は、移動区間や距離、燃料代の根拠を記録して精算しましょう。
| 項目 | 選挙運動員(上限の例) | 労務者(上限の例) |
|---|---|---|
| 交通費(鉄道・バス・車など) | 実費の範囲 | 実費の範囲 |
| 宿泊料 | 1夜23,000円(食事2食分を含む) | 1夜20,000円(食事を除く) |
| 弁当料 | 1食1,500円・1日4,500円 | ― |
| 茶菓料 | 1日1,000円 | ― |
※2025年改正後の基準の例です。実際の額は選挙ごとに確認してください。
選挙事務所で、選挙運動員や労務者に弁当を出す(現物で提供する)ことはできますが、出せる数に上限があります。原則として候補者1人につき、15人分(45食)×選挙運動期間の日数までです(7日間の選挙なら315食)。1食あたりの金額も、弁当料の基準の範囲内にします。
弁当を現物で出した場合は、二重払いにならないよう、弁当料(実費弁償)から差し引くほか、報酬を受ける事務員や車上運動員などは報酬からも弁当の実費を差し引きます。支援者や来客にふるまうことはできません(公職選挙法第139条)。
買収が認められると、払った側も受け取った側も罰せられます。出納責任者などが罪に問われると、連座制で当選が無効になることもあります。
選挙期間中のSNSや動画の制作を業者に頼むこと自体が、ただちに禁止されるわけではありません。ただし、報酬を受ける業者が実質的に選挙運動を行っていると判断されると、買収などの問題が生じるおそれがあります。業務の範囲と報酬の対価を明確にし、撮影・編集のような作業を業者に、何を投稿するかの判断と公開は陣営に、という分け方にしておくと安全です。詳しくは「政治活動と選挙運動でSNS支援はどう変わる?」をご覧ください。
業者経由で頼む場合も、車上運動員本人への報酬は1日の上限額以内にし、届出も必要です。紹介料や手配料が別にかかる場合は、その業務の実態と金額が妥当かを確認し、上限を超えるための名目上の支払いにならないよう注意しましょう。
家族など特別な信頼関係から選挙運動に関わる人は、事務員などとして報酬を払う対象に含まれないとされています。迷ったら選挙管理委員会に確認しましょう。
実費弁償として、実際にかかった交通費の範囲で払えます。定額の「交通費」を渡すと、報酬と見られるおそれがあるので、領収書などで実費を確認して払いましょう。
車上運動員・事務員・労務者への報酬や実費弁償は選挙運動費用として、出納責任者が選挙運動費用収支報告書に記載します。領収書も必ず受け取りましょう。
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