政治家のチラシや後援会のリーフレットの隅に、「討議資料」と小さく書かれているのを見たことはありませんか。初めて選挙に挑む方からは、「チラシには討議資料と入れないといけないの?」「入れておけば配っても大丈夫?」という質問をよく受けます。
結論から言うと、「討議資料」は法律で決まった表示ではなく、入れる義務もありません。また、入れたからといって違反にならないわけでもありません。この記事では、討議資料の意味と、政治活動用のチラシを作る・配るときの注意点を、2027年の統一地方選に向けて整理します。
※2026年10月時点の情報です。具体的な判断は各選管にご確認ください。
「討議資料」は、政党や後援会が配る政治活動用のチラシ・リーフレットに、慣習として書かれている表示です。公職選挙法などの法律に出てくる言葉ではありません。
「政策や活動について、読んだ人と一緒に考えるための資料です」という意味合いで使われてきました。選挙運動のためのビラではなく、政治活動のための資料であることを示す目的で書かれることが多い表示です。
大きな違いは時期です。告示前に配る政治活動用チラシでは、特定の選挙での投票を依頼することはできません。告示後に選挙運動のための紙のビラを配る場合は、公職選挙法で定められた種類・枚数・配り方などのルールに従う必要があります。演説やSNSでの選挙運動には、別のルールがあります。
| 項目 | 政治活動用チラシ(討議資料など) | 選挙運動用ビラ(証紙ビラ) |
|---|---|---|
| 主に配る時期 | 告示前。選挙期間中は制限がある | 立候補の届出から投票日の前日まで |
| 書ける内容 | 政策、活動報告、後援会の案内など。投票の依頼はできない | 投票の依頼ができる |
| 枚数・配り方 | 告示前の適法な政治活動であれば、法律上の枚数の決まりはない。ただし内容や配り方によっては事前運動の問題になる | 種類・枚数・配り方が法律で決まっていて、選管の証紙を貼る |
| 表示 | 「討議資料」の表示は任意 | 頒布責任者・印刷者の氏名・住所などの記載が必要 |
選挙運動用ビラのルールは、選挙ビラ(証紙ビラ)の解禁ルールと正しい配布方法の記事で解説しています。
入れる義務はありません。公職選挙法には、政治活動用のチラシに「討議資料」と書かなければならないという決まりはありません。
一方で、「討議資料」と書いておけば違反にならない、というわけでもありません。選挙運動にあたるかどうかは、表示ではなく、チラシの内容、配る時期、配る相手や枚数などから実態で判断されます。投票の依頼が書かれていれば、「討議資料」と書いてあっても事前運動とみなされるおそれがあります。
それでも多くの陣営が「討議資料」と入れるのは、政治活動として作った資料であることを、発行者の姿勢として示せるからです。入れるかどうかは自由ですが、「入れたから大丈夫」とは考えないようにしましょう。
ポスターとチラシはルールが違います。候補者本人の氏名などを表示した個人の政治活動用ポスターや、後援団体名を表示した政治活動用ポスターは、任期満了による選挙では任期満了日の6か月前から投票日まで、選挙区内に貼れません。また、政治活動用ポスターには掲示責任者と印刷者の氏名・住所の記載が必要です。チラシのように配るものには、この6か月前の掲示規制はありません。ポスターについては政治活動用ポスターの掲示期限の記事をご覧ください。
チラシの制作・印刷費は、誰が発注・負担したかに応じて適切に会計処理しましょう。届出済みの後援会など政治団体が支出した場合は、収支報告書に記載します。なお、政治団体は設立届の提出前に、政治活動のための寄附を受けたり支出したりすることはできません。後援会のつくり方は後援会の作り方の記事で解説しています。
告示前に配るチラシは、政治活動の範囲にとどめる必要があります。立候補の届出前に選挙運動をすることは、事前運動として禁止されています(公職選挙法129条)。
投票の依頼を書いていなくても、告示の直前に、立候補予定者の氏名や顔写真を大きく載せたチラシを不特定多数に大量に配るなど、実態として当選を目的とした活動と判断されれば、事前運動にあたるおそれがあります。後援会の内部向けの資料や入会案内も、配る時期・相手・枚数・内容によって判断が変わります。
また、チラシに投票の依頼がなくても、手渡すときに特定の選挙での投票をお願いすれば事前運動になり得ます。配るときの声かけにも注意しましょう。
紙のチラシと、ウェブサイトやSNSでの発信は、適用されるルールが別です。ネットで発信できる内容でも、事前運動が禁止されていることは同じです。
迷う表現や配り方は、印刷・配布の前に選管に相談しましょう。ただし、選管が案内できるのは一般的な法令の取り扱いで、個別の行為が適法かどうかを最終的に保証するものではありません。
告示日から投票日までの選挙期間中は、政治活動用のチラシにも制限がかかります。誰が配るのか(政党・政治団体か、候補者個人か)と、選挙の種類によって内容が変わります。
| 選挙 | 政党・政治団体のチラシ(ビラ) |
|---|---|
| 都道府県議・政令市議 | 原則として配れない。所属候補者の数など一定の要件を満たして確認を受けた確認団体だけが、届け出たビラを配れる(一般選挙では原則として所属候補者3人以上が必要) |
| 一般の市議・区議・町村議 | 同じような一律の禁止はない |
どの選挙でも、政党・政治団体が配る文書には、原則としてその選挙区の特定の候補者の氏名や、氏名が類推できる内容を載せられません(公職選挙法201条の13)。公共の建物での配布にも制限があります。
選挙期間中に、候補者の氏名や顔写真が入った討議資料・活動報告をこれまでどおり配ることは、政治団体への氏名表示の規制や、選挙運動用文書の頒布規制を免れる行為と判断されるおそれがあります(公職選挙法142条・146条)。候補者本人の宣伝につながるチラシは、告示前に配り終える計画にしておきましょう。選挙期間中のポスティングについては、選挙期間中でもポスティングはできる?の記事で解説しています。
政党の組織がない方の「配り物」と発信の悩みもまとめました
政治活動用ポスターと2連ポスターのルール、駅頭の旗、後援会づくり、事務所の準備、選挙期間中の戦い方まで、無所属の方からよく受ける質問を「完全無所属で戦う 地方選挙ハンドブック」(A4・全17ページ)に整理しました。
チラシの作り方を含め、政治経験のない新人の方が立候補を考えたときに最初に知っておきたいことを、1冊のハンドブックにまとめました。
「政治経験なしの新人候補として戦う 地方選挙ハンドブック」
A4・全18ページのPDFです。フォームにご入力いただくと、すぐにダウンロードできます。立候補を迷っている段階の方もお気軽にご活用ください。
Q. 「討議資料」と書かずにチラシを配ったら違反ですか?
A. 違反にはなりません。「討議資料」は法律で決まった表示ではありません。違反になるかどうかは、表示ではなく内容や配り方で判断されます。
Q. 選挙の直前に、名前と写真を大きく載せたチラシをたくさん配ってもいいですか?
A. 投票の依頼を書いていなくても、時期・枚数・配り方によっては、当選を目的とした事前運動と判断されるおそれがあります。告示が近い時期の大量配布は特に慎重に考え、迷う場合は選管に相談しましょう。
Q. 告示前に作ったチラシの残りを、選挙期間中に配ってもいいですか?
A. 候補者の氏名や顔写真が入ったものを配ると、選挙運動用文書の頒布規制を免れる行為と判断されるおそれがあります。選挙期間中に配れるのは、選挙運動用ビラなど法律で決まったものです。告示前に配り終える計画にしておきましょう。
Q. 現職議員の議会報告も同じ扱いですか?
A. 議会報告も政治活動用の文書です。告示前は投票の依頼をしないこと、選挙期間中は氏名入りのものを従来どおり配らないことなど、考え方は共通です。作り方は議員の活動報告(議会報告)の作り方と配り方の記事をご覧ください。
※2026年10月時点の情報です。具体的な判断は各選管にご確認ください。
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