2026年10月、衆議院選挙で届け出た選挙事務所とは別の「連絡所」が選挙運動に使われていたのではないか、という週刊誌報道がありました。報道を受け、当該閣僚は、連絡所には常駐する人員や電話を置いておらず、投票依頼の電話かけも行っていないと説明し、疑惑を否定しています。また、連絡所の費用が選挙運動費用収支報告書に記載されていたことについては、事務的なミスとして訂正したと説明しています。
個別の事案の法的な評価とは別に、この報道は、陣営が事前に確認しておきたいポイントを示しています。選挙事務所には数の上限があり、選挙事務所に当たるかどうかは、名前ではなく実際の使い方で判断されるということです。
この記事では、選挙事務所の数と届出のルール、選挙事務所とみなされやすい場所、そして「公民館や自治会館を選挙事務所に借りてもいいのか」を、統一地方選に立候補する方向けに整理します。
※2026年10月時点の情報です。個別の判断は、必ず立候補する選挙の選挙管理委員会に確認してください。
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選挙事務所を置けるのは、候補者(または推薦届出者)です。数は公職選挙法第131条で決まっていて、統一地方選で行われる議員選挙や市区町村長選挙では、1人1か所までです。
| 選挙 | 選挙事務所の数 |
|---|---|
| 都道府県議会議員選挙 | 1か所 |
| 市区町村議会議員選挙 | 1か所 |
| 市区町村長選挙 | 1か所 |
| 衆議院(小選挙区)など | 原則1か所。政令で定める選挙区では増やせる(国政選挙は別の制度) |
冒頭の報道で「2か所」とされていたのは、衆院の一部の選挙区で、政令により複数の事務所が認められているためです。地方選挙では、本部のほかに「支部」や「第2事務所」は置けません。
選挙事務所は、置いたらすぐに選挙管理委員会へ届け出ます。
物件の借り方や家賃の払い方、看板の規格は「後援会事務所・選挙事務所の借り方」でくわしく解説しています。
公職選挙法上の選挙事務所とは、判例上「選挙運動に関する事務を取り扱う一切の場所的設備」とされています。政府の答弁書も同じ考え方で、ある場所が選挙事務所に当たるかは、具体的な事実に即して判断されるとしています。
つまり、看板に「連絡所」「後援会事務所」と書いてあっても、そこで選挙運動の事務をしていれば、選挙事務所と判断されるおそれがあります。届け出た1か所以外にそうした場所があると、数の制限や届出のルールに反することになりかねません。
電話かけなど一つの行為だけで直ちに決まるわけではなく、活動の内容、設備、継続性、指揮命令の実態などを総合的に見て判断されます。
迷う場所があるなら、選挙期間中は使わない、作業は届け出た選挙事務所に集約する、というのが安全です。選挙期間中も政治活動の事務所を残す場合は、選挙運動に使わないよう運営を分けておきましょう。
電話による投票依頼は、選挙運動として認められています。注意したいのは「どこでかけるか」です。
運動員の報酬のルールは「ウグイス嬢・事務員・ボランティアの報酬ルール」にまとめています。
「地元の公民館や自治会館を選挙事務所にしたい」という相談はよくあります。結論から言うと、法律で一律に禁止されているわけではありませんが、公民館は施設のルールで断られることが多く、自治会館は注意点が多いのが実情です。
| 場所 | 選挙事務所に使えるか | 理由 |
|---|---|---|
| 公民館 | 施設のルールによる(難しいことが多い) | 社会教育法第23条で、公民館が特定の候補者を支持することが禁じられている。選挙事務所のような継続的な利用は、条例や利用規則で認めていない例が多い |
| 市の集会所・コミュニティセンター | 施設のルールによる | 条例や利用規程で、政治目的の利用を制限していることが多い |
| 自治会館(自治会の持ち物) | 注意点が多い | 自治会の規約に沿った正式な決定が必要。無償や格安で借りると「団体からの寄附」に当たるおそれ |
| 民間の貸し会議室・空き店舗 | 使える | 通常の賃貸契約で、相場の賃料を払う |
社会教育法第23条は、公民館自身が「公私の選挙に関し、特定の候補者を支持すること」を禁じています。政治に関する集会への貸し出しが一律に禁止されているわけではありませんが、選挙事務所のように特定の候補者が継続的に使う利用は、設置条例や利用規則で認めていない公民館が多くあります。まずは施設の利用規則を確認し、管理者に相談しましょう。なお、個人演説会は、公職選挙法に基づき公営施設を使える場合があります。これは選挙事務所とは別の制度です(くわしくは「個人演説会の開き方」)。
自治会館は自治会の財産です。選挙事務所として使うことが法律で一律に禁止されているわけではありませんが、次の点を確認する必要があります。
同じ理由で、支援者の会社の事務所や倉庫を無償で使わせてもらうのも、会社からの寄附に当たるおそれがあります。なお、適正な賃料を払えば必ず借りられる、というわけではありません。貸すかどうかは、持ち主の規約やルール次第です。
公職選挙法第133条で、選挙運動のための休憩所その他これに類似する設備は設けられません。運動員が休憩すること自体が禁じられているわけではありませんが、有権者や運動員が立ち寄って休める場所を選挙運動のために用意すると違反になるおそれがあります。
選挙事務所の数の制限などに反して設置された選挙事務所について、選挙管理委員会は閉鎖を命じることができます(公職選挙法第134条)。また、数の制限や休憩所の禁止に違反した場合は、罰則の対象になります。選挙運動の費用を正しく報告しないと、収支報告書の問題にもつながります。
住民や他陣営からの指摘で問題が表面化することもあります。届け出た1か所に作業を集めることが、いちばんの予防策です。
A. 政治活動の事務所として残すことはできますが、そこで選挙運動の作業をすると、選挙事務所とみなされるおそれがあります。選挙運動は届け出た選挙事務所に集約しましょう。
A. 選挙管理委員会に出します。都道府県議選では県と市区町村の両方に出す例もあるので、立候補予定者説明会の資料で提出先を確認してください。
A. 少人数でも、選挙運動のために人を集めて継続的に作業をしていれば、その場所が選挙事務所とみなされるおそれがあります。電話かけは届け出た選挙事務所で行うのが安全です。
A. 自治会の中立性の問題に加え、無償や格安で借りると団体からの寄附に当たるおそれがあります。借りる場合は自治会での正式な手続きと、相場の賃料の支払いが必要です。
選挙事務所の場所や運営体制を決めたら、次は選挙期間中の情報発信の準備です。限られた人員でも候補者の活動を伝え続けられるよう、撮影・編集の体制も早めに整えておきましょう。株式会社ハレフルは、公職選挙法を踏まえ、つど選挙管理委員会にも確認しながら、選挙期間中のSNS・ショート動画の撮影・編集をお手伝いしています。出陣式やマイク納めなど、その日のうちの納品にも対応します。
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