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そのリツイート、違反かも?一般人が選挙期間中に注意すべきX(旧Twitter)の活用法と公職選挙法

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目次

はじめに

選挙のシーズンが近づくと、私たちのタイムラインは候補者の顔写真や政策の話題で一気に賑やかになります。X(旧Twitter)をはじめとするSNSは、今や政治家にとっても、そして私たち有ak有権者にとっても、情報を発信し、議論を交わすための欠かせない「広場」となりました。

「この候補者を応援したい」「この政策は素晴らしいと思う」

そう感じた時、私たちはごく自然に「いいね」を押し、自分の意見をツイートし、そして「リツイート(RT)」でその情報を拡散します。しかし、その「ごく自然な行動」が、もしかしたら「公職選挙法(こうしょくせんきょほう)」という古い法律に抵触してしまうかもしれない、と聞いたらどうでしょうか。

「一般人なのに?」「ただリツイートしただけなのに?」

そんな不安や疑問が、選挙期間中のSNS利用をためらわせる(=萎縮させる)原因になっているかもしれません。この記事では、選挙ブログを運営する私たちだからこそお伝えしたい、「一般の有権者」が選挙期間中にX(旧Twitter)を活用する上で、「何がOKで、何がNGなのか」という疑問を、公職選挙法のルールに沿って徹底的に解説します。

正しい知識を身につけ、不必要な「うっかり違反」を避け、主権者として堂々と政治に参加しましょう。

そもそも「選挙運動」とは何か?

公職選挙法(以下、公選法)を理解する上で、まず押さえなければならない最重要キーワードが「選挙運動」です。公選法は、選挙の公平性を保つために、この「選挙運動」に様々なルール(期間、主体、方法)を課しています。

「選挙運動」とは?

「特定の選挙」において、「特定の候補者(または政党)」に「当選させる(または、させない)こと」を「目的」として行う、投票の勧誘や働きかけの行為全般を指します。

非常に堅苦しい定義ですが、ポイントは「特定の候補者」と「当選させる目的」です。
NG(選挙運動):「〇〇選挙、A候補に投票をお願いします!」「B党を勝たせてください!」
OK(政治活動):「政治に関心を持とう」「日本の将来が不安だ」「消費税は引き下げるべきだ」

単なる政策論や政治批判、あるいは「投票に行こう!」という呼びかけ(=投票啓発)は、特定の候補者の名前を出して当選を図るものではないため、「選挙運動」とはみなされず、原則として自由に行えます。私たちが注意すべきは、この「選挙運動」にあたる部分です。

大原則:2013年「ネット選挙運動」の解禁

「SNSで選挙の話をすると捕まる」というのは、今や過去の話です。2013年(平成25年)に公選法が改正され、それまで原則禁止されていたインターネット(ウェブサイト、SNS、動画配信など)を利用した選挙運動が、ついに「解禁」されました。

これにより、候補者や政党はもちろん、私たち一般の有権者も、選挙期間中にインターネットを通じて特定の候補者を応援する「選挙運動」を行うことが可能になったのです。これが、X(旧Twitter)で私たちが選挙の話をできる法的な大前提で、ただし、この解禁には「何をやってもいい」わけではなく、いくつかの重要な「ただし書き(ルール)」が付け加えられました。

一般人がX(旧Twitter)で「できること」「注意すべきこと」

では、公選法のルールに基づき、X(旧Twitter)の具体的なアクション(ツイート、RT、いいね等)が「OK」なのか「NG」なのか、詳しく見ていきましょう。ここでの大前提は、「公示日(告示日)から投票日の前日まで」の「選挙運動期間」におけるルールです。(※投票日当日はルールが激変します。後述)

応援ツイート(特定の候補者への投票呼びかけ)

結論
まったく問題なく「OK」です。

「〇〇選挙区は、A候補に投票します」
「Bさんの政策に共感した。Bさんを応援しよう」
「比例代表はC党に入れます。皆さんもぜひ」

これらはいずれも、2013年のネット選挙解禁によって、一般の有権者にも認められた正当な「選挙運動」です。自分の言葉で特定の候補者や政党を応援するツイートを投稿することは、法律上何の問題もありません。

候補者や政党の投稿の「リツイート(RT)」

結論
原則として「OK」です。

候補者本人や政党の公式アカウントが発信する「私に投票してください!」「わが党をお願いします!」という選挙運動の投稿。これを、私たちが単純に「リツイート(RT)」する行為も、合法な選挙運動として認められています。

候補者が作成した「選挙運動用ビラ」を、私たちが街角で受け取って、それを知人に配る(頒布する)行為と同じように、ネット上でその投稿を拡散(頒布)する行為と見なされます。

「引用リツイート(引用RT)」

結論
内容次第では「グレーゾーン」であり、注意が必要です。

ここが、タイトルの「そのリツイート、違反かも?」の核心の一つで、単純なRTとは異なり、引用RTは「自分のコメント」を付け加えて拡散する行為です。この「自分のコメント」の内容によっては、公選法に抵触するリスクがゼロではありません。

OKな例(単なる応援)
・候補者の投稿を引用RTし、「私もAさんを全力で応援します!」「この政策、本当に素晴らしい!」とコメントする。
→ これは、上記の「応援ツイート」と同じく、合法な選挙運動です。

NGになる例(虚偽・誹謗中傷)
・候補者の投稿を引用RTし、「こいつは嘘つきだ!前科があるぞ!」と事実無根のコメントを付ける。
→ 虚偽事項公表罪(公選法第235条)という重大な犯罪になります。

・候補者の投稿を引用RTし、「こんなバカな候補者は落選させよう」「無能」などと単なる悪口や侮辱を書く。
→ 名誉毀損罪(刑法)や、公選法の「選挙の自由妨害罪」に問われる可能性があります。

注意すべきグレーゾーン
・候補者の投稿の一部だけを切り取り、本来の意図とは全く異なる意味(ネガティブな意味)に解釈できるようなコメントを付けて引用RTする行為。
→ 「事実をゆがめて公にした」として、虚偽事項公表罪(公選法第235条)に問われるリスクがあります。

【アドバイス】
応援したい候補者の投稿を拡散する際は、意図がねじ曲がるリスクのない「単純リツイート」が最も安全です。もし引用RTで応援コメントを付ける場合も、相手への敬意を払い、事実に基づいた内容に留めましょう。

「いいね」を押す

結論
まったく問題なく「OK」です。

候補者の投稿に「いいね」を押す行為は、それ自体が「積極的に投票を呼びかける行為」とは見なされにくく、単なる意思表示や好意の表明(「読みました」のサイン)と解釈されます。「いいね」が選挙運動とみなされ、法的に問題となる可能性は、現状では限りなくゼロに近いと言えます。

「ダイレクトメッセージ(DM)」での投票依頼

結論
一般人が行うと「違法」となる可能性が極めて高く、ここがSNS利用における最大の落とし穴の一つです。2013年の法改正では、「ウェブサイト等(ホームページ、ブログ、SNS、動画共有サイト)」の利用は解禁されましたが、「電子メール(Eメール)」を使った選挙運動は、候補者や政党以外には引き続き「禁止」されました。

では、X(旧Twitter)の「DM」はどちらに当たるのか?
法律に明記はありませんが

1.送信相手が特定されている(1対1または特定多数)
2.非公開の通信である

という性質が「電子メール」と酷似しているため、DMを使った投票依頼は、禁止されている「電子メールによる選挙運動」と見なされる可能性が非常に高いです。

【アドバイス】
選挙運動(投票依頼)は、必ず「全世界に公開されたツイート(リツイート含む)」で行ってください。「Aさんに投票してね」といった内容を、友人にDMで送る行為は、絶対に避けてください。

有料広告(プロモーション)の利用

結論
一般人は「絶対にNG」です。
「この応援ツイートを、Xの広告機能(プロモーション)を使って拡散したい」
「A候補を当選させるため、自分でお金を払ってXに広告を出したい」
これらは公選法で明確に禁止されています。

選挙運動のための有料インターネット広告は、政党や候補者本人(選挙運動費用として)しか出稿できません。一般人が行うと処罰の対象となります。

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最大の注意点:「投票日当日」はすべてが禁止

ここまでは、「選挙運動期間(投票日の前日まで)」の話でした。しかし、「投票日当日(0時00分 ~ 投票終了時刻まで)」は状況が一変します。公選法第129条により、選挙運動は「投票日の前日」までと定められており、投票日当日は、あらゆる選挙運動が「一切禁止」されているのです。

そして、このルールは、2013年のネット選挙解禁後も変更されておらず、インターネット(Xを含む)であっても、投票日当日に選挙運動を行うことは「違法」となります。

投票日当日の「NG」行為
NG:「皆さん、A候補に最後の1票をお願いします!」とツイートする。
NG:候補者の「最後の訴え」の投稿をリツイート(引用RT含む)する。
NG:「今日は〇〇党に入れようと思います」と投稿する。
これらはすべて、投票日当日の「選挙運動」とみなされ、違反となります。

投票日当日の「OK」行為
では、投票日当日はX(旧Twitter)で一切何もつぶやけないのでしょうか?そんなことはなく、禁止されているのは、あくまで「選挙運動(特定の候補者への投票依頼)」だけです。

・「選挙の日だ!みんな投票に行こう!」
・「投票所の〇〇小学校、空いていました」
・「投票完了!外食して帰ります」
・「どの候補者に入れるか、今まさに悩んでいる」

これらは、特定の候補者への投票を呼びかけるものではなく、単なる「投票の呼びかけ(投票啓発)」や「個人の感想」です。「投票に行こう」と呼びかける行為は、選挙運動ではないため、投票日当日でも全く問題ありません。

【アドバイス】
投票日当日は、特定の候補者名や政党名を出す投稿(リツイート含む)は、一切停止してください。「投票に行こう」という呼びかけに留めるのが最も安全な活用法です。

その他、公選法が厳しく禁じる「3つのワナ」

X(旧Twitter)の機能とは別に、公選法が内容面で厳しく禁じている行為があります。これらは選挙期間中か否かに関わらず、重大な犯罪となるため、絶対に避けてください。

1. 虚偽事項公表罪・誹謗中傷(ウソやデマを流す)

「A候補は逮捕歴がある」(事実無根のウソ)
「B候補は海外の組織から献金を受けている」(デマ)
「C候補は頭がおかしい、国賊だ」(誹謗中傷)

候補者の当選を妨害する目的で、事実無根のウソやデマを流すことは「虚偽事項公表罪」(公選法第235条)という重罪です。また、単なる悪口や侮辱であっても、「選挙の自由妨害罪」(公選法第225条)や、名誉毀損罪(刑法)に問われる可能性があります。

SNSは、こうしたデマや中傷が最も拡散しやすいツールです。情報の真偽(ファクト)を確かめず、安易に拡散することも同罪と見なされる危険があります。

2. 買収罪(利益供与による投票依頼)

「私のこの投稿をRTしてくれた人の中から、抽選で10名にAmazonギフト券をプレゼント! A候補を応援しよう」「A候補に投票してくれたら、今度ご飯奢ります」
これは冗談では済まされません。

選挙に関して、金銭や物品などの利益を提供(または約束)して投票を依頼する行為は「買収(ばいしゅう)罪」(公選法第221条)という、選挙犯罪の中で最も重い罪の一つです。SNSを使った「ギフティング(景品配布)」と選挙運動を安易に結びつけることは、極めて危険です。

3. 未成年者(18歳未満)の選挙運動

公選法により、18歳未満の未成年者は、一切の「選挙運動」が禁止されています。これは、インターネット上(Xを含む)でも同様で、17歳の高校生が、自分のX(旧Twitter)アカウントで「私はA候補を応援します!皆さん投票しましょう!」と投稿する行為は、公選法違反となります。

(※「投票に行こう」という投票啓発活動や、政治的な意見を言うこと自体は、18歳未満でも可能です。あくまで「特定の候補者への投票依頼(選挙運動)」が禁止されています)保護者や周囲の大人は、このルールを未成年者に周知徹底させる責任があります。

まとめ

長くなりましたが、一般人が選挙期間中にX(旧Twitter)を使う上でのルールをまとめます。恐れる必要はなく、ポイントは「時期」と「方法」の2点だけです。

Ⅰ.「選挙運動期間」(公示日~投票日前日)

【OK】
・応援ツイート(「Aさんに投票しよう!」)
・候補者の投稿の「単純リツイート」
・「いいね」を押す
・応援目的の「引用リツイート」(ただし誹謗中傷や虚偽はNG)

【NG】
・DM(ダイレクトメッセージ)での投票依頼
・有料広告(プロモーション)の利用
・ウソやデマの拡散、誹謗中傷
・金品を約束した投票依頼(買収)
・18歳未満による選挙運動

Ⅱ.「投票日当日」(0時 ~ 投票終了まで)

【OK】
・「投票に行こう!」という呼びかけ(投票啓発)
・「投票しました」という報告(特定の候補者名なし)

【NG】
・すべての選挙運動(「Aさんに投票を!」ツイート、RT、引用RTなど)

「公職選挙法」という法律は、確かに古く、現代のSNS社会に追いついていない部分も多くあります。しかし、その目的は「選挙の公正さを守る」という一点にあります。SNSは、私たち一般人が、お金をかけずに自分の意見を表明し、政治に参加できるようになった画期的なツールです。

「よく分からないから黙っておこう」と萎縮してしまうのは、あまりにもったいないことで、「DMは使わない」「投票日当日は応援しない」といった基本的なルールさえ守れば、X(旧Twitter)はあなたの「一票」を、より価値あるものにする最強の味方となります。

正しい知識を武器にルールを守って、あなたの声をタイムラインに響かせましょう。

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