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「新しい総理大臣が誕生しました」というニュースを見て、「あれ、私たちが直接選んだわけでもないのに、どうやって決まったんだろう?」と不思議に思ったことはありませんか?
選挙のたびに投票には行くけれど、その一票がどうやって国のトップである総理大臣選びにつながっているのか、いまいちピンとこない…という方も多いかもしれません。
ご安心ください。本ブログを最後まで読めば、日本の総理大臣の決め方が驚くほどスッキリと理解できます。一見複雑に見える政治の仕組みも、一つひとつのステップを丁寧に見ていけば、決して難しいものではありません。
そして、この仕組みを知ることは、ただの豆知識にとどまりません。私たちが普段何気なく支払っている税金の使い道から、将来の働き方、社会のルールまで、私たちの生活のあらゆる場面に関わる国のリーダーがどう選ばれるのかを知ることは、政治と自分の暮らしのつながりを実感する第一歩になるはずです。
それでは、さっそく「総理大臣はどうやって決まるのか」という大きな謎を解き明かしていきましょう。
まず本題に入る前に、そもそも「内閣総理大臣(ないかくそうりだいじん)」、通称「首相(しゅしょう)」が、一体どんな仕事をしているのかを確認しておきましょう。国のリーダーであることは知っていても、具体的な役割は意外と知られていないかもしれません。ここでは、主な3つの役割を具体例を交えてご紹介します。
日本の政治は、大きく分けて3つの権力に分かれています。
このうち、総理大臣は**「行政」の最高責任者**です。そして、行政の中心となる組織が「内閣」です。
内閣とは、財務省や外務省、厚生労働省といった、国の様々な仕事を担当する省庁の「経営チーム」のようなものだとイメージしてください。そして、**総理大臣はそのチームを率いるCEO(最高経営責任者)**です。
総理大臣の非常に重要な権限の一つが、このチームのメンバーである「国務大臣(こくむだいじん)」、つまり「〇〇大臣」と呼ばれる人たちを任命したり、辞めさせたりすることです。どの分野の専門家をチームに加えるかを決めることで、総理大臣は「これから日本をこういう方向に進めていきたい」というビジョンを実現しようとするのです。
私たちの生活に関わる新しいルール(法律)や、集められた税金を何にどれだけ使うかという計画(予算)の案を作成し、国会に提出するのも内閣の非常に重要な仕事です。
例えば、「子育て支援のためにもっとお金を使おう」「新しい感染症対策の法律を作ろう」といった、国民生活に直結する大きな方針の原案は、総理大臣が率いる内閣によって作られます。
もちろん、最終的に法律や予算を決めるのは国会での話し合いですが、その議論のたたき台となる案を提出する権限は、内閣が持っています。特に、国の年間の予算案を国会に提出できるのは、内閣だけに認められた強力な権限です。このことからも、総理大臣がいかに国の方向性を決める上で中心的な役割を担っているかがわかります。
総理大臣には、日本の平和と国民の安全を守るという、極めて重い責任があります。その象徴が、自衛隊の最高指揮監督権です。
これは、万が一、外国からの攻撃を受けたり、大規模な自然災害が発生したりといった緊急事態に、国民の生命と財産を守るための最終的な判断を下す役割です。もちろん、こうした権限が安易に行使されることはありませんが、国のトップとして、平時から日本の安全保障について考え、いざという時には決断を下す覚悟が求められる、非常に重要な仕事なのです。
国のリーダーである総理大臣ですが、実は誰でもなれるわけではありません。日本国憲法には、総理大臣になるための、シンプルですが絶対に欠かせない2つの条件が定められています。
まず、大前提として、総理大臣は「国会議員」の中から選ばれなければなりません。
国会議員とは、選挙によって国民から選ばれた代表者のことです。日本の国会は、**衆議院(しゅうぎいん)と参議院(さんぎいん)**の二つで構成されており、総理大臣は、このどちらかの議院に所属している議員である必要があります。
これは、国民の代表ではない人が、いきなり国のトップになることを防ぐための重要なルールです。国の政治を動かすリーダーは、まず国民による選挙の洗礼を受け、代表として認められた人物でなければならない、という民主主義の基本原則がここに表れています。
ちなみに、法律上は衆議院議員でも参議院議員でも総理大臣になれますが、これまでの慣例として、ほとんど全ての総理大臣は衆議院議員から選ばれています。その理由については、後ほど詳しく解説します。
もう一つの条件は、「文民(ぶんみん)」でなければならない、というものです。
「文民」という言葉は、少し難しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言えば**「軍人ではない人」**という意味です。現在の日本では、現役の自衛官以外の人を指すと考えてよいでしょう。
なぜこのような条件があるのでしょうか。これには、日本の過去の歴史から得た、非常に重要な教訓が関係しています。
戦前の日本では、「軍部大臣現役武官制(ぐんぶだいじんげんえきぶかんせい)」という制度がありました。これは、内閣のメンバーである陸軍大臣と海軍大臣は、現役の軍人(大将・中将)でなければならない、というルールです。
この制度が、結果的に軍部の政治的な力を非常に強くしてしまいました。例えば、軍部が気に入らない内閣ができたとき、大臣をわざと出さない、あるいは途中で辞めさせることで、内閣を総辞職に追い込むことができたのです。つまり、軍部が内閣の生殺与奪の権を握るという、非常にいびつな状況が生まれてしまいました。
このような軍部の独走を許したことへの深い反省から、戦後につくられた日本国憲法では、政治の最終的な決定権は、選挙で選ばれた国民の代表が持つべきだという考え方が徹底されました。これを「文民統制(ぶんみんとうせい)」または「シビリアン・コントロール」と呼びます。
総理大臣や国務大臣が「文民」でなければならないというルールは、二度と軍部が政治に過剰に介入し、国を誤った方向に導くことがないようにするための、民主主義を守るための重要な「安全装置」なのです。
さて、いよいよこの記事の核心部分です。国会議員であり、かつ文民であるという条件をクリアした人の中から、どのようにして一人の総理大臣が選ばれるのでしょうか。そのプロセスを、3つのステップに分けて見ていきましょう。
まず最も重要なポイントは、日本の総理大臣は、私たち国民が直接投票で選ぶわけではない、ということです。アメリカの大統領選挙のように、国民が候補者の中からリーダーを直接選ぶ制度(大統領制)とは仕組みが異なります。
では誰が選ぶのかというと、国民の代表である国会議員です。
衆議院と参議院のそれぞれの議院で、所属する議員たちが「この人が次の総理大臣にふさわしい」と思う国会議員の名前を投票用紙に書いて投票します。この、国会で行われる総理大臣を指名するための選挙を「首班指名選挙(しゅはんしめいせんきょ)」または「指名選挙」と呼びます。
各議院で投票が行われ、投票総数の過半数の票を獲得した人が、その議院が指名する総理大臣候補となります。
ここで、一つの疑問が浮かびます。「もし、衆議院と参議院で、別々の人が総理大臣候補として指名されたらどうなるの?」
実際に、衆議院と参議院で多数を占める政党が異なる「ねじれ国会」の状態では、このような事態が起こり得ます。
その場合に備えて、憲法には明確なルールが定められています。それは、「衆議院の優越(しゅうぎいんのゆうえつ)」という原則です。
もし衆議院と参議院の指名が異なった場合、まず両院の代表者による話し合いの場(両院協議会)が開かれます。それでも意見がまとまらなければ、最終的に衆議院の指名した人物が、国会全体の意思として総理大臣になることが決められています。
なぜ、衆議院の意見がこれほど強く優先されるのでしょうか?それには、衆議院が参議院よりも、より直接的に国民の意思(民意)を反映しやすいと考えられているからです。
このように、衆議院は参議院に比べて、より頻繁に国民の審判を受ける機会があるため、その時々の国民の考えを政治に反映させる上で、より重要な役割を担っていると位置づけられているのです。だからこそ、国のリーダーを決めるという最も重要な場面で、衆議院の意思が最終的な決定権を持つ仕組みになっているのです。
国会によって「この人が次の総理大臣です」と指名された後、最後の仕上げとなる儀式が行われます。それが、天皇による任命です。
国会で指名された人物は、皇居に赴き、天皇から正式に内閣総理大臣として任命されます。この儀式を「親任式(しんにんしき)」と呼びます。
ここで注意したいのは、これはあくまで**憲法に定められた形式的な儀式(国事行為)**であるという点です。天皇が自らの意思で総理大臣を選んだり、国会が指名した人物を拒否したりすることはできません。
このステップは、日本の政治が国民の代表者である国会を中心に動いていることと、天皇が象徴としての役割を担っていることの区別を明確に示す、重要な意味を持つ儀式と言えるでしょう。
ここまで、総理大臣が決まるまでの正式な手続きを見てきました。しかし、多くの方がニュースなどで目にするのは、「〇〇党の新しい総裁が、次の総理大臣になります」といった報道ではないでしょうか。
なぜ、一つの政党のリーダー選びが、事実上の総理大臣選びになるのでしょうか。この謎を解くカギは、日本の政治の根幹をなす「議院内閣制」という仕組みにあります。
「議院内閣制(ぎいんないかくせい)」とは、一言でいうと、**「内閣は、国会(特に衆議院)の信頼(信任)があって初めて成り立つ」**というルールのことです。
内閣は、国会から「あなたたちになら政治を任せられる」と信頼されている間だけ、行政の仕事を進めることができます。もし衆議院で「この内閣は信頼できない!」という決議(内閣不信任決議)が可決されると、内閣はメンバー全員で辞職するか、衆議院を解散して国民に信を問う選挙を行うかのどちらかを選ばなければなりません。
この「内閣は国会の信頼がなければ存続できない」という大原則が、総理大臣選びに直結します。
思い出してください。総理大臣は、国会で行われる「首班指名選挙」で選ばれます。国会議員は、基本的に自分が所属する政党のリーダーに投票します。
ということは、国会で最も多くの議席を持っている政党(これを「与党(よとう)」と呼びます)のリーダーが、首班指名選挙で最も多くの票を集めることになります。これは、ごく自然な数の論理です。
つまり、議院内閣制という仕組みがあるからこそ、衆議院議員総選挙で勝利し、国会で第一党(最も議席数の多い政党)になることが、総理大臣を送り出すための絶対条件となるのです。
この「議院内閣制」の具体的な例として、自由民主党(自民党)の「総裁選挙(そうさいせんきょ)」を見てみましょう。
戦後の日本では、長い期間にわたって自民党が国会で最も多くの議席を占める与党となってきました。そのため、自民党のトップである「総裁」に選ばれることが、その後の国会での首班指名選挙で勝利し、内閣総理大臣に就任することを事実上意味してきたのです。
だからこそ、テレビや新聞では、自民党という一つの政党のリーダー選びである総裁選挙が、まるで国民全体のリーダーを決める選挙であるかのように、非常に大きく報道されるわけです。私たち有権者は自民党の総裁選挙に直接投票することはできませんが、その結果が次の首相を決めることになるため、国民的な注目が集まるのです。
総理大臣は、一度就任したらずっとその職にあり続けるわけではありません。では、どのような場合に交代するのでしょうか。主なパターンを見ていきましょう。
総理大臣には、憲法上「任期は何年」という明確な定めはありません。しかし、総理大臣は衆議院議員の中から選ばれるのが通例であり、その衆議院議員には4年の任期があります。
そのため、衆議院が任期満了を迎えて総選挙が行われれば、その結果を受けて新しい国会が召集され、改めて首班指名選挙が行われます。
また、総理大臣は自らの判断で、任期の途中で衆議院を解散することができます。解散すれば、もちろん総選挙が行われます。この選挙の結果、与党が議席を減らしてしまえば、たとえ同じ人物が総理大臣を続投したくても、退陣せざるを得なくなる場合があります。
総理大臣が任期の途中で辞める場合、それは「総理大臣一人が辞める」のではなく、「内閣総辞職(ないかくそうじしょく)」といって、内閣のメンバーである国務大臣全員が一斉に辞職する形をとります。その主な理由には、以下のようなものがあります。
パターン |
説明 |
近年の具体例 |
衆議院での不信任決議可決 |
衆議院が「内閣を信頼しない」という意思表示をした場合。内閣は10日以内に総辞職するか、衆議院を解散しなければなりません。 |
これは強力な手段ですが、実際に可決されるケースは稀です。 |
総選挙での敗北 |
総選挙の結果、与党が過半数の議席を失い、政権を維持できなくなった場合。 |
2009年の総選挙で自民党が大敗し、麻生太郎内閣が総辞職。 |
党内や世論の圧力 |
不祥事や政策の失敗などで内閣支持率が低迷し、世論や与党内から退陣を求める声が強まった場合。 |
普天間基地移設問題などで行き詰まり、2010年に鳩山由紀夫内閣が総辞職。 |
健康上の理由 |
総理大臣自身の健康問題により、職務の継続が困難になった場合。 |
持病の悪化を理由に、2020年に安倍晋三総理(当時)が辞任を表明。 |
党首任期の満了 |
与党の党首としての任期が切れ、再選されなかった(しなかった)場合。 |
2021年、自民党総裁選挙への不出馬を表明し、菅義偉内閣が総辞職。 |
このように、総理大臣の交代には、選挙という国民の審判によるものから、政治的な判断や個人の事情によるものまで、様々なパターンがあるのです。
さて、ここまで日本の総理大臣の決め方について、詳しく解説してきました。最後に、この記事で最もお伝えしたい大切なポイントを振り返りましょう。
日本の内閣総理大臣は、
これらの仕組みを一つにつなげてみると、何が見えてくるでしょうか。
それは、**「私たちの投じる一票が、巡り巡って総理大臣選びに直結している」**という紛れもない事実です。
私たちが選挙で投票するのは、自分の選挙区の候補者、あるいは政党です。その一票一票が集まって、各政党の国会での議席数が決まります。そして、その議席数の結果が、どの政党が与党となり、その党のリーダーが総理大臣になるかを決めるのです。
あなたの1票 → 国会議員の誕生 → 国会での勢力図の決定 → 与党の決定 → 内閣総理大臣の指名
この大きな流れを理解すれば、選挙が単なる「よく知らない人の名前を書くイベント」ではなく、「国のリーダーシップを誰に、どのチームに託すかを決めるための、最も重要で、かつ私たちに与えられた唯一の機会」であることが見えてくるはずです。
政治のニュースが少し面白く感じられたり、「次の選挙では、どの政党がどんなリーダーを掲げているのか見てみようかな」と思えたりしたら、それはあなたが政治への関心を深め、主体的に社会に関わるための大きな一歩を踏み出した証拠です。
あなたのその一票が、この国の未来を動かす、最初の力なのです。