供託金の仕組みは知っていても、実際の手続きがこんなに面倒だとは思わなかった——選挙を経験した候補者や陣営スタッフから、よく聞く言葉です。金額を用意することに意識が向きがちですが、供託金は「お金さえあれば当日払える」というものではありません。
必要書類・窓口の受付時間・立候補届け出との連動など、事前に把握しておかないと告示直前に詰まります。この記事では、供託金の納付手続きを順を追って解説します。
供託金を納付するのは、選挙管理委員会ではなく法務局(供託所)です。ここが最初の落とし穴です。「選管に払う」と思い込んでいる方が意外と多く、直前になって「法務局に行かなければいけないのか」と慌てるケースがあります。
納付先は、立候補する選挙区を管轄する法務局または地方法務局です。都市部には複数の法務局支局・出張所がありますが、供託を受け付けている窓口は限られているため、事前に管轄の法務局を確認しておくことが必要です。
法務局の窓口受付時間は原則として平日の午前9時〜午後5時15分であり、土日祝日は受け付けていません。告示日が月曜日の場合、前の金曜日までに手続きを済ませておかないと間に合わないということも起きます。告示日程から逆算して、余裕を持って動くことが重要です。
供託金の納付方法は、大きく2つあります。
最もシンプルな方法ですが、数十万〜数百万円の現金を持ち歩くことになるため、安全面での注意が必要です。窓口で「金銭供託申請書」を提出し、現金を納付すると「供託書」が交付されます。この供託書が、立候補届け出に必要な書類になります。
銀行(日本銀行の歳入代理店に指定されている金融機関)経由で供託金を振り込む方法です。銀行の窓口で「供託金の納付」である旨を伝え、所定の手続きをとります。振込完了後に法務局で供託書の交付を受ける必要があるため、銀行と法務局の両方を回ることになります。振込の場合、処理に時間がかかることがあるため、告示日の直前ではなく数日の余裕を持って動くことをお勧めします。
どちらの方法でも最終的に「供託書」を受け取ることが目的です。この供託書なしには立候補の届け出ができないため、供託書の受け取りまでを完了させてはじめて手続き終了です。
法務局の窓口で供託金を納付する際に必要なものは以下の通りです。
|
必要なもの |
備考 |
|---|---|
|
金銭供託申請書 |
法務局窓口でもらえる、または法務局のウェブサイトからダウンロード可 |
|
納付する現金(または振込済みの証明) |
選挙の種類に応じた金額を正確に |
|
本人確認書類 |
運転免許証・マイナンバーカードなど |
|
印鑑 |
申請書に押印が必要な場合あり |
金銭供託申請書は法務局の窓口でもらえますが、事前にダウンロードして記入しておくと当日がスムーズです。申請書の「供託の原因たる事実」欄には、どの選挙に立候補するための供託かを明記します。記載内容に不備があると受け付けてもらえないため、事前に法務局に電話で確認しておくことをお勧めします。
法務局での手続きが完了すると「供託書」が交付されます。この供託書は、立候補届け出の際に選挙管理委員会に提出する必要があります。供託書のコピーではなく原本が必要であるため、紛失しないよう厳重に管理してください。
立候補届け出は告示日当日に行いますが、届け出の受付時間は選挙管理委員会によって異なり、午前8時30分から始まる場合もあります。告示日当日に法務局に供託金を払いに行って、そのまま選管に届け出に向かうという動き方は、時間的に非常にタイトです。供託金の納付は告示日の前日までに済ませ、当日は供託書を持って選管に届け出るだけの状態にしておくことが理想です。
選挙経験者から聞く、供託金手続きで詰まりやすいポイントをまとめます。
「市役所の近くにある」と思っていたら、実際には別の場所にあったというケースがあります。法務局の場所と受付窓口の場所(支局・出張所によって供託を受け付けていないところもある)を事前に地図で確認しておきましょう。
金銭供託申請書は初見では書き方に迷う箇所があります。特に「供託の原因たる事実」の記載は、選挙の種類・選挙区・告示日などを正確に書く必要があり、窓口で書き直しを求められることもあります。事前に法務局に電話して記載例を確認しておくか、同じ選挙を経験した先輩候補者に書き方を聞いておくと安心です。
選挙の日程によっては、告示前日が祝日にあたることがあります。そうなると前々日までに法務局で手続きを完了させる必要があります。選挙日程が決まったら、すぐにカレンダーと法務局の営業日を照らし合わせて、手続き可能な日を確認してください。
銀行経由で振り込んだ場合、処理が翌営業日扱いになるケースがあります。直前に振り込んだために法務局で供託書を受け取れず、届け出に支障が出るという事態は必ず避けなければなりません。振込は余裕を持って早めに行うことが鉄則です。
没収ラインを超える得票を得た場合、供託金は選挙後に返還されます。返還を受けるためには、法務局に「供託物払渡請求書」を提出する手続きが必要です。選挙管理委員会から「供託物没収通知書」または「供託物返還通知書」が送られてくるため、その書類を持って法務局で手続きを行います。
返還の手続きは、選挙終了後しばらくしてから選管から通知が届いた後に行うことになります。当選・落選を問わず没収ラインを超えていれば返還されるため、落選した場合でも手続きを忘れずに行ってください。特に多忙な当選直後は、この手続きを後回しにしてそのまま忘れてしまうというケースもあります。返還請求には時効(10年)がありますが、早めに処理しておくことをお勧めします。
供託金の手続きは、一度経験してしまえば次からは迷わなくなります。しかし初めての立候補では、「何が正しいのか」「何を持っていけばいいのか」という不安がつきまといます。法務局に事前に電話して確認する、選挙管理委員会の説明会に参加する、経験者に話を聞く——こうした事前準備が、当日の混乱を防ぎます。
「供託金の手続きを含めた選挙準備全体のスケジュールを整理したい」「自分の選挙区の手続きについて具体的に確認したい」という方は、以下からお気軽にご相談ください。
供託金の手続きから立候補届け出、選挙運動費用の計上、公費負担の申請まで、選挙準備の実務を網羅した一冊です。初めて選挙に関わる方が「何を知らないかを知る」ための最初の一冊として活用いただけます。