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参議院選挙のルールを徹底解説。改選や非改選について

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はじめに

日本の国会は、衆議院と参議院の二つの議院で構成される「二院制」をとっています。「解散総選挙」などで世間の注目を集めやすい衆議院に比べ、「参議院」はどのような仕組みで、どのようなルールに基づいて議員が選ばれているのか、詳しくご存知ない方も多いかもしれません。

参議院選挙には、衆議院選挙にはない、非常にユニークで重要なルールが存在します。その最たるものが、「任期は6年」「解散はなし」、そして「3年ごとに半数だけを選ぶ」という仕組みです。

選挙のたびに「改選議席(かいせんぎせき)」「非改選(ひかいせん)」という言葉を耳にしますが、これが何を意味しているのか、なぜそのような複雑な仕組みになっているのでしょうか。

この記事では、選挙ブログを運営する私たちだからこそお伝えしたい、参議院の根幹をなす選挙ルール、特に「改選」と「非改選」の謎について、その目的から具体的な仕組みまで徹底的に解説していきます。この仕組みを理解すれば、参議院が「良識の府」と呼ばれる理由、そして日本の政治におけるそのユニークな役割が見えてくるはずです。

目次

参議院とは?「良識の府」と呼ばれる理由

まず大前提として、参議院が国会においてどのような存在として位置づけられているのか、衆議院と比較しながら見ていきましょう。日本の国会が二院制を採用しているのは、一つの議院の決定だけでは暴走してしまう危険性があるため、二つの異なる視点から法案などを審議し、より慎重で多角的な意思決定を行うためです。

▼ 衆議院と参議院の決定的な違い

項目

衆議院

参議院

議員任期

4年

6年

解散

あり

なし

役割

国民の意思を迅速に反映

長期的・専門的な視点で審議

通称

-

良識の府(りょうしきのふ)

優越

予算、総理大臣指名などで優越

(基本的には同格だが)優越は限定的


衆議院は、任期が4年と比較的短く、さらに内閣による「解散」があるため、その時々の国民の意思(民意)をダイレクトに反映する議院とされます。選挙の結果次第で、政権が一気に交代するダイナミズムを持っています。

一方、参議院には「解散」がありません。
これは憲法で定められた絶対的なルールです。一度選ばれた議員は、どのような政治的混乱が起ころうとも、必ず定められた任期を務め上げます。

なぜ解散がないのでしょうか?

それは、参議院が「衆議院の決定を再チェックする」という重要な役割を担っているからです。衆議院が、解散総選挙の直後など、一時的な世論の「熱狂」や「ブーム」によって一色に染まってしまった場合でも、参議院がもう一つの視点から「その法案は本当に大丈夫か?」「長期的な視点で見ると問題はないか?」と、冷静に審議し、行き過ぎた政治にブレーキをかける。

このように、短期的な民意や政局の都合に左右されず、長期的かつ安定的な視点から国政を議論する場として設計されているため、参議院は「良識の府」と呼ばれているのです。そして、この「長期的な視点」と「安定性」を担保するために、後述する「6年任期」と「半数改選」という独特のルールが採用されています。

参議院議員の任期:「6年」という長さ

参議院の選挙ルールを理解する上で、まず押さえるべきは議員の「任期」です。
日本国憲法第46条には、このように定められています。

第四十六条
参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。

参議院議員の任期は6年で、これは、衆議院議員の任期4年と比べても非常に長く設定されています。前述の通り、この「6年」という任期は、解散によって中断されることがありません。これにより、議員は目先の選挙結果や一時的な世論の風向きだけを気にするのではなく、腰を据えて国政に取り組むことができます。

例えば、国の100年後を見据えた社会保障制度の改革、外交・安全保障、教育や科学技術の振興といった、結果が出るまでに時間がかかる「息の長い政策課題」について、専門的な知見を深めながらじっくりと議論することが可能になります。

衆議院が「スピード」と「民意の反映」を重視するのに対し、参議院は「安定」と「熟慮」を重視する。そのための「6年任期」なのです。

選挙の核心:「改選」と「非改選」の仕組み

さて、ここからがこの記事の核心です。
憲法第46条には、任期6年と並んで、もう一つの重要なルールが書かれていました。
「三年ごとに議員の半数を改選する」これが、参議院選挙の最もユニークな特徴である「半数改選(はんすうかいせん)」制度です。

参議院の総定数は、現在248議席です。(※2025年選挙から適用)
この248議席を、一回の選挙ですべて入れ替えるのではありません。
248議席を、124議席の「グループA」と、124議席の「グループB」の二つのグループに分けている、と想像してください。そして、選挙は「3年ごと」に行われます。

「改選(かいせん)」とは?

「改選」とは、文字通り「改めて選ぶ」ことです。3年ごとに行われる参議院選挙の「投票対象となる」議席(議員)のことを指します。彼らは、6年前に当選した議員たちです。6年間の任期が満了(まんりょう)するため、今回の選挙で「改めて国民の信を問う」立場にあります。

2025年の参議院選挙、この選挙で「改選」となるのは、6年前の「2019年」に当選した124人の議員たちです。

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「非改選(ひかいせん)」とは?

「非改選」とは、「改選されない」ことです。
今回の選挙の「投票対象となっていない」議席(議員)のことを指します。

彼らは、3年前に当選した議員たちです。
彼らの任期は6年ですから、まだ任期の半分(3年間)が残っています。そのため、今回の選挙では投票対象にならず、そのまま議員としての身分を継続します。

2025年の参議院選挙、この選挙で「非改選」となるのは、3年前の「2022年」に当選した124人の議員たちです。(彼らの任期は2028年まで続きます)

3年ごとに立場が入れ替わる

【参議院選挙のサイクル(具体例)】
2019年選挙
○改選(投票対象):グループA(124議席) → 6年後の2025年まで任期
○非改選(投票対象外):グループB(124議席) → 2022年まで任期

(3年後)

2022年選挙
○改選(投票対象):グループB(124議席) → 6年後の2028年まで任期
○非改選(投票対象外):グループA(124議席) → 2025年まで任期

(3年後)

2025年選挙
○改選(投票対象):グループA(124議席) → 6年後の2031年まで任期
○非改選(投票対象外):グループB(124議席) → 2028年まで任期

このように、参議院の議席(全248議席)は、常に「3年前に選ばれたばかりの議員(非改選)」と「6年間の任期を終えようとしている議員(改選)」が、半分ずつ混在している状態になります。

なぜ「半数改選」なのか? その真の目的

なぜ、こんな一見すると面倒な仕組みを採用しているのでしょうか?それは、参議院の役割である「良識の府」としての「安定性」と「継続性」を、これ以上なく高めるためです。

1. 政治の急激な変化を防ぐ「安定装置」
もし、参議院も衆議院と同じように、一回の選挙で全議員が入れ替わる(全数改選)としたらどうなるでしょう。衆議院解散とタイミングが重なり、世の中が特定の「ブーム」に沸いていると、衆議院も参議院も同じ政党が圧勝し、国会全体が「イエスマン」だらけになる危険性があります。

しかし、半数改選であれば、たとえ選挙でどれだけ特定の政党が圧勝したとしても、入れ替わるのは議席の半分だけです。残りの半分(非改選)には、3年前に選ばれた、ブームとは異なる民意を反映した議員たちが必ず残っています。

これにより、参議院全体が急激にどちらか一方に振り切れることを防ぎ、常に多様な意見が担保される「安定装置(スタビライザー)」としての役割を果たします。

2. 議院の機能と専門性を維持する「継続性」
国会は、法律や予算という極めて専門的な議論を行う場です。もし、選挙のたびに全議員が入れ替わっていたら、国会運営のノウハウや、政策の専門知識がリセットされてしまい、議院としての機能が低下してしまいます。

半数改選であれば、必ず半数の「非改選」議員(=3年以上の経験を持つ議員)が残るため、彼らが「先輩」として議院の運営を支え、新しく入ってきた「改選」議員(新人)に知識やノウハウを引き継ぐことができます。これにより、議院としての機能や専門性が途切れることなく「継続」していくのです。

参議院選挙の「2票」の仕組み

この「改選」「非改選」のルールを理解した上で、最後に、私たちが実際に投票する際のルールを見ていきましょう。参議院選挙では、私たち有権者は2枚の投票用紙(2票)を投じます。これは、改選となる124議席を、「選挙区」と「比例代表」という2つの異なる方法で選出するためです。

(例:2025年選挙で改選される124議席の内訳)
選挙区選挙: 74議席
比例代表選挙: 50議席

1票目:選挙区選挙

投票方法
候補者の「個人名」を書く。

選び方
原則として「都道府県」を単位として、地域の代表を選びます。
ただし、「一票の格差」(都道府県ごとの人口差による一票の価値の違い)を是正するため、人口の少ない県は隣の県と統合される「合区(ごうく)」が導入されています(例:「鳥取・島根選挙区」「徳島・高知選挙区」)。
定数は選挙区によって異なり(1人〜6人)、得票数の多い順に当選者が決まります。

2票目:比例代表選挙

投票方法
「候補者名」または「政党名」のどちらかを書く。

選び方
こちらは「全国」を一つのブロック(全国比例)として、政党の議席を争います。参議院の比例代表は「非拘束名簿式(ひこうそくめいぼしき)」という独特の方式です。

1.まず、各政党が獲得した「政党名の票」と「その党に所属する候補者の個人票」をすべて合算し、政党ごとの総議席数が決まります。

2.次に、その政党内で「誰が当選するか」の順位を、有権者が投じた「候補者個人の得票数」の多い順に決定します。(※この原則の例外として、政党が順位をあらかじめ指定できる「特定枠」という制度も一部導入されています)私たちが投じるこの「2票」は、どちらも「改選」となる124議席を選ぶためのものであり、「非改選」の124議席には一切影響を与えません。

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まとめ

今回は、参議院選挙の複雑なルール、特に「改選」と「非改選」の仕組みについて、その背景と目的を徹底的に解説しました。

参議院の役割
衆議院の「熱狂」に対し、長期的視点で「冷静」に審議する「良識の府」であること。

絶対的なルール
この役割を果たすため、任期は「6年」、そして「解散はない」と定められていること。

選挙の核心ルール
半数改選

憲法で「3年ごとに半数を改選する」と定められています。これにより、参議院(全248議席)は、常に2つのグループに分けられます。

○改選(かいせん):今回の選挙の「投票対象」となる、6年間の任期を満了した半数(124議席)。
○非改選(ひかいせん):今回の選挙の「投票対象外」の、3年前に当選し、まだ任期が3年残っている半数(124議席)。

半数改選の目的
議席の半分を必ず残すことで、
1.政治の安定性(急激な変化を防ぐブレーキ機能)
2.議院の継続性(経験や専門知識の継承)
を担保しています。

参議院選挙は、衆議院総選挙のように「政権を選ぶ」というダイナミックさはありませんが、国政の「安定」と「バランス」を決定づける非常に重要な選挙です。私たちが投じる一票が、議会の半分を入れ替え、国政の「ブレーキ役」の構成を決めている。「改選」「非改選」という言葉には、そうした日本国憲法が定めた二院制の深い知恵が込められているのです。

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