初めて市議会・区議会議員選挙に立候補する方へ:選挙準備と政党公認取得のポイント

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初めて地方自治体の議会議員(区議会議員)選挙に立候補しようと考えている方に向けて、選挙準備の基本と、特に政党から公認をもらいやすくするために必要なことを解説します。新人候補者にとって選挙準備はやるべきことが多岐にわたりますが、計画的に進めることで当選の可能性を高めることができます。

本記事では「初めての立候補」「区議会議員」「選挙準備」「政党公認」といったキーワードに焦点を当て、具体的な事前準備リストや政党公認獲得のポイント、実例や注意点を含めて詳しく紹介します。フォーマルかつ信頼性のある情報をもとにしていますので、ぜひ参考にしてください。

 

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初めての区議会議員選挙に向けた基本準備

初めて区議会議員選挙に挑戦する場合、まずは選挙に出るための基本的な要件や体制を整えることが重要です。以下に、新人候補者が選挙準備で最初に取り組むべき基本事項を挙げます。

立候補に必要な資格要件と手続きの確認

地方議会議員選挙に立候補するには法律上の資格を満たす必要があります。まず、ご自身が被選挙権を有しているか確認しましょう。市区町村議会議員選挙の場合、日本国籍を有し満25歳以上であること、立候補する自治体に引き続き3か月以上住所があることが必要です。年齢要件は選挙当日までに満たせばよいので、告示日時点で25歳未満でも投票日までに25歳に達すれば立候補可能です。

また、立候補にあたっては所定の手続きを踏む必要があります。選挙期日直前の所定の告示日(公示日)に選挙管理委員会へ立候補届出を行います。届出の際には多くの書類や手続きが伴うため、事前に選挙管理委員会主催の「立候補予定者説明会」に必ず参加しましょう。多くの自治体では告示日前に説明会を開き、届出に必要な書類の配布や不備チェックの事前審査を行っています。説明会で選挙運動のルールや注意事項も説明されますので、初めての立候補者は見逃さないようにしてください。

さらに、立候補には供託金の預託も必要です。区議会議員選挙(一般市・東京23区の議会)では30万円の供託金を法務局に預ける必要があります。規定の得票数(有効投票総数の一定割合など)を下回ると供託金は没収されてしまうため、当選ラインに届かないと大きな損失になります。この制度は冷やかし目的の立候補を防ぐ趣旨ですが、新人候補にとっては決して軽くない金額です。したがって、供託金も含めて選挙に必要なお金を早めに準備しておく必要があります。

選挙日程の把握とスケジュール計画

立候補する選挙の日程やスケジュールを把握することも重要です。統一地方選挙の場合は4年に一度の決まった時期に実施されますが、自治体ごとの補欠選挙や繰上げ当選の状況によっても日程が変わることがあります。立候補予定の選挙管理委員会に問い合わせたり、公式発表を確認したりして告示日と投票日を把握しましょう。

選挙の公式な選挙運動期間は市区町村議会議員選挙では一般的に7日間程度と非常に短期間です。その短い選挙期間中に効率よく有権者にアピールするには、半年前〜数ヶ月前からの周到な準備と逆算したスケジュール計画が不可欠です。例えば、選挙6か月前には後援会の立ち上げや公約(マニフェスト)の策定、3か月前には支持者への挨拶回りや選挙資金の最終確保、告示直前には選挙事務所の設置やスタッフの役割分担決め、といったように段階的に準備を進めます。

選挙までの準備期間中は、公職選挙法上「選挙運動」とみなされない範囲で政治活動を行うことが可能です。選挙運動とは「特定の選挙で特定の候補者の当選を目的として投票を得ようとする行為」と定義されており、公示・告示前にこうした行為を行う『事前運動』は禁止されています。例えば「次の区議選に立候補予定の○○です。どうか一票をお願いします!」と有権者に呼びかけるのは選挙運動に該当し、公示前にこれを行えば違法な事前運動となります。一方、公示前であっても投票の依頼を含まない政治活動や立候補準備行為(後援会活動や政策の勉強会開催、挨拶まわりで名前を知ってもらう等)は選挙運動に当たらず認められています。この線引きは微妙な場合もあるため、具体的に何が許され何が禁止か不明な点は専門家や選管に相談しつつ、法律を遵守して活動しましょう。

選挙資金の準備と調達計画

選挙にはかなりの費用が掛かることを心得ておきましょう。ポスター作成、ビラ印刷、ハガキ郵送、選挙カーの手配、事務所経費、支持者への活動報告など、細かな支出が積み重なります。一般に地方議会議員選挙でも最低でも数百万円(約500万円以上)は必要と言われます。選挙の規模が大きくなるほど費用は膨らみ、数千万円単位になることもあります。供託金も必ず必要ですし、「お金をかけない選挙戦」でも供託金だけは用意しなければならないのが実情です。

新人候補の場合、政党の公認が得られれば党から一部資金提供を受けられるケースもありますが、それをあてにするのは禁物です。政党公認候補になること自体が選挙に勝つのと同じくらい難しいハードルであり、大半の候補者は自己資金や支援者からの寄付で費用を賄います。そのため、資金調達計画を早めに立てましょう。

具体的には

  • 自己資金の確保: 貯金や退職金を充当する、資産を処分するなどしてどの程度工面できるか確認します。会社員の方は立候補に際して退職や休職が必要な場合もあるため、選挙期間中の生活費も含めた資金計画が必要です。

  • 家族・親族からの支援: 両親や親戚などに事情を説明し、可能な範囲で援助をお願いすることも検討します。ただし無理な借金は避け、万一落選した場合でも返済に困らない範囲に留める慎重さが必要です。

  • 金融機関からの借入: 銀行融資やローンで資金を借りる方法もあります。ただし選挙は絶対に勝てる保証がなく、落選すれば多額の借金だけが残るリスクがあります。返済の見込みが立たない借金による賭けは極力避けた方が良いでしょう。

  • 政治資金パーティーや個人献金: 支持者にパーティー券を購入してもらう政治資金パーティーの開催や、個人献金の呼びかけも一般的な資金集め手段です。法律に則りながら、後援会組織を通じて資金協力を募る方法を検討します。ただし、多額の資金集め活動は市民感情にも配慮する必要があります。

以上のように、多角的に資金源を確保し、予算を事前に設定して計画的に支出を管理することが大切です。選挙終盤で「想定以上に出費がかさんで支払い不能」という事態にならないよう、最初に予算枠を決めておきましょう。

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後援会の立ち上げと支持者の確保

選挙戦を支える人的ネットワーク作りも早期に着手します。まずは信頼できる身近な人々に立候補の意思を伝え、協力をお願いしましょう。家族や親戚はもちろん、友人、職場の同僚、学生時代の知人など、あなたをよく知る人々が最初の応援団になります。

次に、そうしたコアな支援者とともに後援会(後援会組織)を設立します。後援会とは候補者を後押しするための支援団体で、選挙運動や資金集めの中心的役割を担います(後援会自体の法律上の定義はありませんが、政治資金規正法に基づき政治団体として届け出ることもあります)。後援会を作ることで、組織的に選挙準備を進めやすくなります。

後援会の主な準備事項

  • 役員の選任: 後援会長(多くは地元の有力者や年長者が担う)、事務局長、会計責任者(出納責任者)など、後援会の役職を決めます。信頼できる人物にお願いし、名前を貸してもらうだけでなく実務にも協力してもらえると心強いです。

  • 名簿の整備: 支持を得られそうな人のリストアップを行います。卒業アルバムや同窓会名簿、会社や団体の名簿などから、連絡を取れそうな知人を洗い出しましょう。熱心な支援者には知り合いを紹介してもらい、人脈を広げていきます。

  • ミーティングの開催: 後援会メンバーで定期的に集まり、選挙に向けた戦略や役割分担を話し合います。ポスター貼りやビラ配布、電話かけなど、具体的に誰が何を担当するかを決めておきます。

  • 支持基盤の拡大: 地元の様々なコミュニティに顔を出し、人脈を広げます。町内会や自治会の集まり、地元イベント、ボランティア活動、PTA活動など地域の活動に参加し、「○○さんなら応援したい」と思ってくれる人を増やしていきましょう。

新人候補の場合、とにかく名前と顔を知ってもらうことがスタートラインです。選挙期間に入ってから新規に支持を広げるのは難しいため、事前の政治活動期間にできるだけ多くの有権者と接点を持ち、「地域のために頑張りたい若者(新人)がいる」という認知を広める努力をします。ポスター掲示やビラ配布は選挙期間前は法律で制限がありますが、後援会を通じた挨拶状の送付政治活動用ビラ(一定の様式と届出が必要)など認められている手法もありますので、創意工夫しながら支持者を増やしていきましょう。

政策立案と地域課題の研究

立候補にあたって掲げる政策(公約)や主張も早めに練り上げておく必要があります。新人だからといって「とにかくやる気があります!」だけでは有権者の支持は得られません。なぜ立候補したいのかという動機、当選して実現したいビジョンや政策、解決に取り組みたい地域課題は何か、自分の言葉で語れるようにしておきましょう。

地域の有権者の声に耳を傾け、今どんな問題やニーズがあるのかリサーチします。例えば子育て世帯が多い地域なら待機児童や教育環境、高齢者が多いなら介護や医療体制、商店街があるなら地域経済の活性化など、地域密着の課題を洗い出します。その上で、自分ならどんな政策アイデアでそれらを改善できるかをまとめておきます。

新人候補者の場合、専門的な政策知識が不足しがちですので、現職議員の一般質問や議会議事録を読んで勉強したり、自治体の施策や統計データを調べたりすると良いでしょう。政策面での準備は政党公認を得る際のアピール材料にもなります(後述)し、また選挙中の演説や討論会でしっかり主張を述べるための土台にもなります。

家族や職場の理解・生活面の調整

選挙への立候補は本人だけでなく家族にも大きな影響があります。まずは配偶者や両親、子どもなど家族に立候補の意思を伝え、理解と協力を得ましょう(家族が反対している状況では選挙戦を戦うのは困難です)。選挙期間中は生活が選挙中心になり長時間家を空けることになりますし、当選すれば4年間は公務に専念する必要があります。家庭の事情や仕事との両立について、事前によく話し合っておきましょう。

また、会社勤めの方は職場への報告と調整も欠かせません。公務員は地位を辞さなければ立候補できませんし、民間企業でも公職選挙への立候補に社内規定上の制約がある場合があります。一般的には選挙に専念するため告示日の一定期間前に退職または休職する候補者が多いです。収入が途絶える期間の生活設計や、当選後に議員報酬だけで家計を維持できるか、といった点もリアルに検討しておく必要があります。

健康管理にも注意しましょう。選挙戦は体力勝負ですし、当選後も慣れない公務で負担がかかります。過去に大きな病気や怪我をした経験がある方は主治医と相談しながら体調を整え、持病がある場合は選挙活動を支える上で必要なサポート体制(車いす利用なら介助者を確保する等)を考えておきます。万全のコンディションで本番に臨めるよう、日頃から体力づくりや生活リズムの調整を心がけてください。

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区議選における政党公認・推薦のメリットとデメリット

新人の方が選挙準備を進める中で悩むテーマの一つに、「政党の公認や推薦を受けるべきかどうか」という問題があります。ここでは区議会議員選挙における政党公認・推薦とは何か、そのメリットとデメリットを整理します。

政党公認とは、特定の政党がその候補者を自党の正式な候補者として認めることです。公職選挙法上、政党要件を満たす政治団体の公認を受けた候補は届出の際に党所属として扱われ、選挙公報や投票用紙に党名が記載されます。原則として公認はその政党の党員であることが条件であり、公認候補になるということは政党に所属し強い結びつきを持つことを意味します。

一方、推薦とは政党が「公認ではないが推薦します」という形で支持を表明するものです。推薦候補は公選ハガキやビラに「○○党推薦」と表示できますが、届出上は無所属扱いとなり投票用紙の党派名欄には「無所属」と記載されます。このほかにも、公認・推薦ほど公式ではない支持支援という形で政党や団体が応援してくれるケースもあります。

では、政党の公認(あるいは推薦)を得ることにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

公認・推薦を受けるメリット

●組織的な支援が得られる

政党から公認を得られれば、その政党組織から様々な後押しを受けられます。例えば選挙資金の一部支給(公認料など)や、選挙経験の豊富な党スタッフの派遣、地域の国会議員や他自治体の地方議員の応援演説など、手厚い支援を受けられる可能性があります。選挙に不慣れな新人にとって、党からノウハウを教わったり人的リソースを借りられるのは大きな利点です。

 

●党名による知名度補強

投票用紙に候補者名とともに党派名が記載されるため、有権者に「○○党の候補」と周知できます。特にその政党の支持者層が地域に多い場合、候補者個人の知名度が低くても政党ブランドにより票を獲得できる可能性が高まります。実際、2017年の東京都議会議員選挙では小池百合子知事が率いる地域政党「都民ファーストの会」が躍進し、公認候補となった新人たちが党名の後押しで次々にトップ当選を果たした例があります。このように政党の看板は新人候補にとって強力な追い風になり得ます。

 

●既存組織票の取り込み

政党には固有の支持団体や組織票が存在する場合があります。公認候補になればそうした票田からの票も見込めるでしょう。例えば特定の労働組合がその政党を支持していれば組合員票を期待できますし、地域の党員ネットワークから草の根の支援を受けられることもあります。「定数が複数ある地方議会選挙では、一定の支持を得れば当選可能」なため、組織票の上積みは当選ライン突破に直結します。

公認・推薦を受けるデメリット

●政党イメージの影響を受ける

公認候補は良くも悪くも政党と運命共同体となります。自分とは無関係な同じ政党の議員の不祥事や党全体のスキャンダルにより支持率が低下した場合、自分もその逆風をまともに受けるリスクがあります。街頭演説中に他の議員の不祥事を引き合いに批判されたり、党への批判票が自分への批判に繋がったりする場面もあり得ます。政党の看板は諸刃の剣であり、党の人気が下がれば一緒に沈む可能性がある点は覚悟が必要です。

 

●活動エリアや政策の制約

大きな政党では同じ選挙区に複数の公認候補を擁立することもあります。その際、候補者同士で票の食い合いを避けるため、党内で「地域割り」(担当エリア分担)が行われることがあります。例えば「駅より東側はA候補、西側はB候補」というように活動エリアを党に制限され、自由に全域で運動できないケースもあります。また公認を受け当選した後は党の方針に従って議員活動を行う義務が生じます。自身の信念と党方針が衝突する場面では板挟みになる可能性もあり、政治活動の自由度は無所属に比べ低くなります。

 

●公認を得るハードルそのものの高さ

公認を得るハードルそのものの高さ: 何より、公認を得ること自体が簡単ではありません。特に有力政党ほど公認枠は限られ、公認争いに敗れて結局無所属で出馬するというケースも少なくありません。公認希望者が多数いる場合、党内選考で学歴・職歴・知名度・活動実績など様々な観点から候補者適性を見極められます。新人で突出した実績がない場合、公認を得るまでに相当の努力と運も必要となります。

以上のように、政党公認(や推薦)には大きなメリットがある反面、背負うものも大きいことがお分かりいただけるでしょう。新人にとって政党の後ろ盾は喉から手が出るほど欲しいものかもしれませんが、公認を得るかどうかは選挙の戦い方や政治家としてのスタンスを左右する重大な決断です。無所属で自由に戦う道も含め、自分の信条や戦略に照らして慎重に判断しましょう。

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政党公認を得るための具体的ステップ

では、実際に政党公認を目指す場合、新人候補者はどのような準備や行動をすればよいのでしょうか。ここからは「政党から公認(または推薦)をもらいやすくするために必要なこと」に焦点を当て、具体的なステップを解説します。

自分の信条・活動に合った政党を選ぶ

闇雲に「どこでもいいから公認してくれそうな政党」を探すのではなく、まずは自分の政策理念や価値観に合致した政党を選ぶことが重要です。政党公認を得るということは、その党の一員として看板を背負うことになります。したがって、自分が実現したい政策や地域課題の解決方針が、その政党の基本方針と大きくかけ離れていないかを確認しましょう。

具体的には、各政党の綱領や政策集を読み、自分の考えとの共通点が多い政党を候補に挙げます。同時に、その政党の地元での勢力も調べましょう。地元(選挙区内)に党支部や党所属の現職議員がいる場合、相談に乗ってもらいやすかったり選挙協力が得られやすい利点があります。逆に、既に同じ党から多数の現職議員がいる区で新たに公認を得るのは難しい場合もあります。例えば定数名中○○党現職が複数いるような環境では、新人に公認枠が回ってこない可能性があります。各党のこれまでの当選実績や候補者擁立状況を確認し、自分が入り込める余地があるか見極めましょう。

選択肢としては、国政政党(自民党、立憲民主党、公明党、日本共産党、日本維新の会、国民民主党など)の地方組織から公認を得る道が一般的ですが、他にも地域政党という選択肢もあります。地域政党とは、特定の都道府県や市区町村など地域限定で活動している政党で、近年では大阪維新の会(大阪府)、減税日本(名古屋市)、都民ファーストの会(東京都)など地方発の政党が注目された例があります。

他にも京都党(京都市)やチームしが(滋賀県)など、複数の地方議員が参加する地域政党も各地に存在します。こうした地域政党は、公認候補の公募を行っている場合もあり、国政政党よりハードルが低いケースもあります。ただし、地域政党は首長交代などで短命に終わる例も多く、組織として継続力があるか見極める必要があります。応募する際はその政党の将来性や支持基盤も判断材料にしましょう。

早めの情報収集と党関係者との接点づくり

​志望政党のあたりが付いたら、できるだけ早い段階で行動開始することが肝要です。各政党は次の選挙に向けた候補者選定を選挙の半年~1年以上前から進めています。特に統一地方選挙のように同時に多くの地方議会選が行われるケースでは、公認候補の内定が選挙前年の秋頃までに決まってしまうこともあります。立候補を決意したら、すぐにでも党へのアプローチを始めましょう

まず行うべきは情報収集です。志望する政党の地方組織(都道府県連や総支部)のWebサイトを調べ、候補者公募の有無を確認します。例えば、立憲民主党では各地で一般公募による候補者募集を随時行っており、専用サイトで案内を公開しています。自民党でも地域によっては公募選考を実施することがあります。公募を受け付けている場合は、応募要項(必要書類や締切日、送付先など)に従って正式にエントリーしましょう。公募には履歴書や志望動機書の提出、面接試験などが含まれるのが通常です。

公募がない場合や公募に頼らずに動きたい場合は、党関係者とのコネクション作りがカギとなります。地元選出の国会議員や都道府県議、市区町村長など、その政党の有力者に面会や相談を申し込みましょう。地元事務所にアポイントを取って訪問したり、後援会の集会や政経セミナーに参加して顔を繋いだりするのも有効です。自分が地元で活動している様子(後援会を作り支持者を集めている、地域イベントで積極的に活動している等)をアピールし、「ぜひ○○党で頑張りたい」という熱意を伝えます。

また、現在公認を得て活動している議員の動向にも注意しましょう。もし同じ選挙区で引退予定の高齢現職や他区へ鞍替えする議員がいれば、その政党には新人公認の空き枠が生まれます。そうしたタイミングは絶好のチャンスです。党の内情に詳しい人から非公式な情報を得られると有利ですが、難しい場合は新聞報道や政局情報にもアンテナを張っておくと良いでしょう。

政党へのアプローチと公認面談・選考のポイント

実際に政党側と接触し、公認を検討してもらう段階では、自分をできるだけ魅力的な候補者として売り込むことが必要です。政党に「この新人を公認したい」と思わせるために、以下のポイントを意識しましょう。

●プロフィール・経歴の準備

自身の学歴・職歴・資格・社会活動歴などを整理し、文章や口頭で説明できるようにします。特に強みになる経歴(例:地元で長年ボランティアをして地域に貢献、企業勤務で培った専門知識がある、青年会議所やPTAでリーダー経験がある等)は積極的にアピールします。政党側は新人候補の「素材」を見ますので、人となりが伝わる自己PR資料を用意すると良いでしょう。

 

●志望動機・ビジョンを明確に

なぜその政党から立候補したいのか、当選後にどんな政策を実現したいのか、明確な言葉で伝えます。他の候補との差別化になるキーワード(例:「子育て支援に情熱を持っている」「IT企業での経験を活かし行政改革をしたい」など)を用意し、面談や会合の場で盛り込むと印象に残ります。志望政党の基本理念に共感していることも具体例を挙げて述べましょう。

 

●地元での支持基盤を示す

政党が新人を公認するか判断する際、「当選の見込みがあるか」は重要な観点です。自分にどれだけ票を集められそうかを示すために、後援会の会員数や支援者数、紹介できる支援者名簿の数などを伝えます。例えば「後援会に既に〇〇人が入会し、地域の有力者△△氏からも応援をいただいています」といった情報は、党にとって心強い材料です。単に「頑張ります」ではなく、具体的な支持の広がりを数字や名前で示しましょう。

 

●選挙資金計画のアピール

資金力も当選可能性に直結します。「自己資金〇〇万円を確保済み」「〇〇人から献金の約束を得ている」など、ある程度メドが立っていることを伝えれば、党から見て「この新人は本気で準備している」と評価が上がります。裏を返せば、資金面含め準備不足だと「公認しても戦えない」と判断されかねません。

 

●クリーンなイメージの保持

政党は公認候補にスキャンダルがないかも重視します。過去の言動で問題になりそうなことがないか、SNSの発言や交友関係も含めセルフチェックしておきましょう。場合によっては公認前に党本部による身辺調査が行われることもあります。不安要素がある場合、事前に釈明材料を用意するか、信頼できる紹介者から保証してもらうなど対策しましょう。

公認選考の場では、面接形式で党幹部や選考委員から質疑を受けることがあります。想定される質問としては「なぜ政治家になりたいのか?」「この地域の課題は何だと考えるか?」「家族の同意は得ているか?」「当選するための見込み(勝算)は?」などが挙げられます。落ち着いて自分の言葉で答えられるよう、模擬質問集を作って練習しておくと良いでしょう。志望政党の理念や最近の政策トピックについて聞かれる可能性もありますから、党の機関紙やHPなどに目を通し知識を深めておくことも大切です。

公認獲得後の活動と注意点

努力の結果、念願の政党公認(あるいは推薦)を得られたら、喜んで終わりではありません。公認候補として戦うための体制づくりと、党から与えられるサポートを最大限活用する準備を進めましょう。

まず、政党支部や他の公認候補との連携体制を確認します。例えば同じ党の現職議員や他地域の候補者と合同で研修を受けたり、選挙対策本部会議に参加したりする機会があるかもしれません。与えられた情報や指示には迅速に対応し、組織の一員として恥ずかしくない行動を心がけます。

党から選挙資金やスタッフ派遣の支援が約束された場合、その受け入れ準備も必要です。資金提供があれば適切に収支報告できるよう会計責任者と連携し、派遣スタッフが来るなら事務所での役割や住居手配などを整えておきます。応援に駆けつけてくれる国会議員や地方議員が決まれば、日程を調整し最大限効果が出る時間帯・場所で演説してもらえるようプランを練りましょう。

一方で、公認を受けたことで発生する制約や義務も認識しておきます。前述のように、同じ党の候補者間で活動地域を割り振られることがあるため、党の方針に従って自分の担当エリアに集中するようにします。他候補の地盤を荒らすような行動は厳禁です。また、公認候補として選挙戦を戦う以上、選挙公約や主張も党の政策と矛盾がないよう調整が必要です。もし独自色を強く出したい公約がある場合は、事前に党の選対や幹部に相談し許可を得る方が無難です。党から支給された公認候補用の腕章やたすきがあれば、着用ルールを守ってアピールしましょう。

最後に、公認を得られなかった場合の対応にも触れておきます。万一、希望していた政党から公認(や推薦)を得られなかったとしても、落胆して立候補自体を諦める必要はありません。無所属で出馬して勝利した例は数多くありますし、公認無しでも別の形で政党や団体から支援を引き出すことも可能です。例えば「党公認は間に合わないが応援はする」と裏で支援してもらったり、他党と協力関係を築いて相乗り推薦を得たりするケースも地方選挙では見られます。公認を逃した場合でも柔軟に戦略を立て直し、後述する無所属の場合の戦い方のポイントを参考に準備を続けましょう。

 

初心者候補者が押さえておきたいQ&Aと注意点

最後に、初めて立候補する新人候補者がよく抱く疑問や注意すべき点についてQ&A形式で整理します。

無所属で立候補するのは不利ですか?

一概に不利とは限りませんが、条件次第です。政党公認がない無所属候補は、党名による支援や組織票が期待できないため、自力での集票が求められます。しかしその反面、政党に縛られない自由な立場であることをアピールできます。実際、政党の推薦を一切受けずに当選した地方議員も多数存在しており、「しがらみのないクリーンな新人」を売りに有権者の支持を得た例もあります。

無所属で戦う場合は、とりわけ個人の知名度地域密着度がものを言います。地元で長年活動して顔が広い人や、元職・有名人など知名度の高い人は無所属でも当選しやすい傾向があります。一方、全く無名の新人が無所属でゼロから支持を築くのはハードルが高いため、後援会活動や地域回りでどれだけ地道に浸透できるかがカギです。また、地元の有力な団体(自治会や業界団体、労組など)の支援を個別にもらえれば、政党公認に匹敵する組織力になることもあります。

まとめると、無所属の不利を跳ね返すには「個人の魅力・ネットワーク」が重要です。政党名がない分、ポスターや演説で伝えられるメッセージを工夫し、「なぜ無所属なのか(しがらみなく地域のために働くため等)」を明確に伝えるようにしましょう。それでも政党公認候補が乱立する選挙では埋没しやすいリスクがありますので、自身の状況に応じてどちらが有利か検討してください。

政党の「公認」と「推薦」はどう違うのですか?

簡単に言えば公認はその党の正式な候補、推薦は党が推すけれど正式所属ではない候補です。公認候補になると届け出上その党の所属候補となり、投票用紙にも党名が印刷されます。推薦の場合、届け出上は無所属で党籍は持ちませんが、「○○党推薦」と選挙公報等に記載でき、党から応援演説や資金面の一部支援を受けられる場合があります。

メリット・デメリットの面では、公認候補の方が党から受けられる支援は大きく、知名度向上効果も高いですが、その分先述のような制約も強まります。推薦は公認よりもゆるやかな関係で、選挙後も無所属議員として一定の自由度を保てますが、支援体制は公認より弱くなる傾向があります。要は公認と推薦の中間くらいの立ち位置と考えると良いでしょう。政党側としても、公認枠が限られる場合に「推薦」に留めて複数候補を支援するケースや、公認までは与えないが有力新人なので推薦するケースなどがあります。新人であれば、公認を得られなくても推薦を取り付けるだけでも組織的後押しが受けられるので、可能なら狙う価値はあります。

公認が得られなかった場合、どうすればいいですか?

公認を最終的に得られなかった場合でも、いくつか取れる戦略があります。まず、推薦や支援を依頼することです。党の事情で公認は出せないが当選してほしい候補には、推薦という形で応援してくれることがあります。また、公認をもらえなかった政党とは別の政党に改めて接触し、そちらの推薦を得るという手もあります(ただし思想信条が大きく異なる政党だと有権者に不信感を持たれる恐れがあるため注意が必要です)。

さらに、他の新人候補や小政党と協力体制を組むことも選択肢です。選挙区によっては「反現職」で無所属同士が連携し、お互いの後援会に相手を紹介しあうようなケースや、少数政党が独自候補を立てず有力無所属を支援するケースもあります。要は、公認がなくても周囲を巻き込む工夫で戦えるということです。

それでも状況が厳しければ、今回は準備期間が足りなかったと割り切って次回以降の選挙に向けて種まきをする判断も必要かもしれません。選挙は周期的に訪れます。一度落選しても地道な地域活動を続け、次の選挙でリベンジして当選する新人も大勢います。公認を逃したからといって情熱を失わず、長期的な視点で政治活動を継続することが大切です。

選挙準備で注意すべき法律上のポイントは?

選挙準備に際しては、公職選挙法などのルールをしっかり守ることが大前提です。特に新人候補が陥りがちな点として事前運動の禁止があります。先述の通り、告示前に有権者へ投票依頼をする行為は一切禁止されています。たとえ好意であっても、支持者が「今度うちの息子が立候補するからよろしくね」と近所にお願いして回るだけで法律違反になり得ます。本人のみならず、後援会スタッフや家族にも「選挙が始まる前に票のお願いをしてはいけない」ことを周知徹底しましょう。

SNSやインターネット上の活動についても注意が必要です。現在、選挙運動におけるインターネット利用はかなり自由になりましたが、告示前の選挙運動(事前運動)をネットで行うことも当然禁止です。また有権者側にもルールがあり、未成年者は選挙運動に参加できない(例えば18歳未満の高校生が候補者を応援する投稿をするのもNG)などの制限もあります。選挙当日は候補者や政党のSNSに対する「いいね」やシェアすら控えるよう注意喚起されています。新人候補者はこうした選挙ルールになじみが薄いことが多いので、必ず選管の説明会資料やガイドブックを熟読し、守るべき禁止事項をリストアップしておきましょう。

もう一つ、買収や寄付の禁止にも触れておきます。選挙で有権者に金品を配ること(いわゆる票の買収)は重い刑事罰の対象です。当たり前と思われるかもしれませんが、例えばお祭りで配布するうちわや名刺サイズのカレンダーですら、公選法上は有価物とみなされ違法となるケースがあります。何か配布物を作成する場合は、選挙プランナーや詳しい人に「これは配ってよい物か」確認することをお勧めします。

総じて、選挙は法律との戦いでもあります。違反を犯すと最悪の場合当選無効や逮捕という事態にもなりかねません。クリーンで公正な選挙戦を貫くことが、結果的に有権者からの信頼にも繋がります。法律を順守しつつ、有効な手段をフル活用して戦略を練りましょう。

 

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まとめ

初めての区議会議員選挙への立候補準備は、想像以上にやることが多く大変ですが、一つひとつ着実に取り組めば道が開けてきます。基本的な資格要件の確認、資金・人材の準備、後援会づくり、政策のブラッシュアップ、スケジュール管理といった土台作りを万全にした上で、自分に合った政党公認・推薦の戦略を考えることがポイントです。政党から公認を得るには早めの行動と周到な根回しが必要ですが、公認の有無に関わらず最後にものを言うのは候補者本人の情熱と努力です。

この記事で解説した内容を踏まえて、計画的に選挙準備を進めてください。新人であっても十分な準備と熱意があれば、選挙という舞台で有権者の心を動かすことができます。ぜひ健闘を祈ります。初めての立候補で不安も多いかと思いますが、周囲の助けを借りながら着実に歩みを進め、明るい未来へ挑戦していきましょう。あなたのチャレンジが実りあるものとなるよう願っています。

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