選挙期間中にSNSで注意すべきルールと禁止行為

選挙期間中、SNSを通じて自分の想いを発信したり、支持する候補者を応援したりする人は少なくありません。しかし、SNS上での発言や投稿には、公職選挙法に基づくルールが定められており、知らずに違反してしまうケースもあります。特に選挙運動と政治活動の違いや投稿可能なタイミング、使えるツールなどには細かな規定があり、正しく理解しておくことが重要です。

本記事では、選挙とSNSに関する基本的な考え方から、SNSでやってはいけない選挙運動の具体例、違反時の罰則までを分かりやすく解説します。


選挙運動と政治活動の違い

SNSを活用するうえで注意したいのが、「選挙運動」と「政治活動」の線引きです。どちらも選挙に関係する活動と思われがちですが、公職選挙法では両者を明確に区別しています。誤った認識のまま行動してしまうと、意図せず法律に抵触してしまうおそれがあるため注意が必要です。以下で、それぞれの特徴と違いを確認していきましょう。


候補者の当選を目的とする選挙運動

選挙運動とは、特定の選挙において、特定の候補者の当選を目指し、有権者に投票を促す活動を指します。たとえば、街頭演説やビラ配り、SNSでの「○○さんに投票してください」という呼びかけも、すべて選挙運動にあたります。

こうした活動は、公示日(または告示日)から投票日の前日までの決められた期間中に限って認められています。それ以前や以後に同じ内容を発信すると、法律違反になるおそれがあるため注意が必要です。うっかり違反してしまわないよう、選挙運動が許される期間と内容はきちんと把握しておきましょう。


政治上の目的を持って行う政治活動

政治活動とは、政治上の目的をもって行われる一切の活動から、選挙運動をのぞいたものを指します。少しややこしく感じるかもしれませんが、例えば政策を広めたり、支持者を集めたりといった活動は、政治活動にあたります。政党や政治団体が行う政策の宣伝活動、政治家個人が主催する時局講演会や議会報告会などもそのひとつです。

選挙期間中であっても、選挙運動に当たらなければ、こうした活動は基本的に自由とされています。ただし、どこまでが政治活動で、どこからが選挙運動なのかの線引きが難しい場面もあるため、SNS上で情報を発信するときは慎重に判断したいところです。

 

選挙運動と政治活動の違い

 

インターネット選挙運動で変わったこと

SNSやウェブサイトなど、インターネットを使った情報発信は、選挙の場面でも広く活用されるようになってきました。ただし、ネット上での選挙運動には、法律で定められたルールがあることを忘れてはいけません。

現在、どのようなことが認められていて、どのような点に注意すべきなのでしょうか。ここからは、ネット選挙運動に関する基本的なルールを見ていきましょう。


ウェブサイトの利用の解禁

2013年の公職選挙法改正により、インターネットを活用した選挙運動が解禁されました。​これにより、候補者や政党はもちろん、一般の有権者も、ウェブサイトやブログ、SNS(X、Facebookなど)を通じて特定の候補者の支持を表明したり、投票を呼びかけたりすることができるようになりました。

具体的には、政策の紹介や応援メッセージの投稿、動画の共有などが挙げられます。​​ただし、インターネットを利用した選挙運動が解禁されたとはいえ、全てが自由になったわけではありません。例えば、有料のインターネット広告を利用した選挙運動は、政党等のみが認められており、一般の有権者が行うことは禁止されています。​


選挙運動用の電子メールの送信は禁止

SNSやウェブサイトでの選挙運動が認められている一方で、今もなお厳しい規制が残されているのが「電子メール」です。候補者や政党であれば、選挙運動用のメールを送ることができますが、一般の有権者が同様の内容を送信することは公職選挙法で禁止されています。

例えば「◯◯さんに投票して」といった文面のメールを知人に送ったり、候補者から届いた選挙運動用メールを転送したりする行為は認められていません。

電子メールは閉じた空間でやりとりされる性質があり、誹謗中傷やなりすましなどに悪用されるおそれがあるため、法律上も慎重に扱われています。思わぬ違反を避けるためにも、「有権者はメールは使えない」と覚えておきましょう。


SNSは投稿内容で選挙運動とみなされる

選挙運動期間外に注意したいのが、SNSでの投稿です。​前述した通り、選挙運動とは、特定の候補者の当選を目的として有権者に投票を呼びかける行為のことを指し、これは選挙運動期間中のみ認められています。

そのため、選挙運動期間外に「〇〇さんを応援しています」「次の選挙では〇〇さんに投票しましょう」といった内容をSNS上で投稿をすると、「事前運動」とみなされ、公職選挙法に違反する可能性があります。これは一般の有権者だけでなく、候補者本人や支援者であっても同様です。

近年は、政治活動の一環としてSNSを使うケースが増えているため、投稿内容や発信のタイミングには特に注意が必要です。一方で、「投票に行こう」といった一般的な呼びかけは選挙運動には該当しないため、期間外であっても問題ありません。


SNSでやってはいけない選挙運動の具体例

では、SNSでどのような行為が公職選挙法違反と判断されるのでしょうか。ここからは、選挙運動期間中に禁止されている行為と、期間外でも注意すべき行為について、それぞれ分けて確認していきましょう。


選挙運動期間中に禁止されていること

選挙運動期間中にSNSで禁止されている主な行為は、以下の5つです。

投票日当日の選挙運動
未成年者(満18歳未満)による選挙運動
候補者に関する虚偽情報の投稿・拡散
匿名や偽名での選挙運動
選挙運動用の電子メールの転送

なかでも特に気をつけたいのが、投票日当日の投稿です。インターネットを使った選挙運動が認められているのは、選挙前日の23時59分59秒までとされています。そのため、「〇〇候補を当選させましょう」「〇〇党に一票を」といった投稿を当日に行うと、公職選挙法に違反するおそれがあります。

また、候補者の過去の投稿を当日にリポスト・シェアしたり、「〇〇候補に投票してきました」と報告したりする行為も、結果的に投票を促す内容と判断され、罰則の対象になる可能性があります。「うっかり」「知らなかった」では済まされないのが法律ですので、しっかりと覚えておきましょう。


選挙運動期間外でも注意すべきこと

選挙運動は原則として、選挙期間中に限って認められています。この点については、前の見出し「SNSは投稿内容で選挙運動とみなされる」でも触れましたが、ここでは期間外にありがちな注意ポイントを整理しておきましょう。

【選挙期間外に気をつけたいSNS投稿例】

「次の選挙では〇〇候補に入れよう」といった呼びかけ
候補者の名前や写真を使った応援メッセージ
「〇〇候補を勝たせるために頑張ります!」といった選挙運動への意気込み表明
「〇〇選挙に立候補します!」といった選挙への立候補表明
選挙運動用動画の投稿

このような投稿を選挙運動期間外に行った場合、事前運動とみなされ、公職選挙法違反となる可能性があります。候補者本人だけでなく、有権者による投稿でも違反の対象となるため、選挙期間外の発信にはいっそうの注意が必要です。

 

SNSでやってはいけない選挙運動の具体例

 


法令に違反した場合の罰則とリスク

SNSでの選挙運動には一定の自由が認められていますが、ルールに反した場合は公職選挙法違反により厳しく処分される可能性があります。

ここからは、法令に違反した際の罰則とリスクを解説します。


罰則の例

SNSを使って選挙運動を行う際に、特に気をつけたい違反行為とその罰則は以下のとおりです。

選挙期間外の選挙運動:1年以下の禁錮または30万円以下の罰金(公職選挙法第239条第1項第1号)
有権者による電子メールを使った選挙運動:2年以下の禁錮または50万円以下の罰金(公職選挙法第243条第1項第3号)
未成年者(満18歳未満)による選挙運動:1年以下の禁錮または30万円以下の罰金(公職選挙法第239条第1項第1号)
氏名等の虚偽表示:2年以下の禁錮または30万円以下の罰金(公職選挙法第235条の5)
虚偽の情報を公表:4年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金(公職選挙法第252条第1項・第2項)

こうした違反は「知らなかった」では済まされません。SNS上の投稿であっても、選挙に関わる内容であれば公職選挙法の規制対象となることを忘れないようにしましょう。


選挙権・被選挙権の停止

選挙に関する法律違反は、罰金や懲役だけで終わる話ではありません。場合によっては、投票する権利や立候補する権利そのものが、一定期間失われてしまうこともあります。例えば、公職選挙法違反で禁錮以上の刑が確定すると、その執行中は選挙権と被選挙権の両方が停止されます。

このように、SNS上での行動ひとつで、重大な問題に発展しかねないため、「みんなやっていることだし大丈夫」と軽く考えるのは危険です。


その他のリスク|名誉棄損

SNSでの選挙運動中、つい感情的になって候補者や政党を批判することもあるかもしれません。​しかし、事実に基づかない誹謗中傷や虚偽の情報を拡散すると、名誉棄損として法的責任を問われる可能性があります。​

具体的には、候補者に関する虚偽の事項を公にした場合、公職選挙法第235条第2項により処罰の対象となります。​また、事実を明らかにせずとも、公然と人を侮辱した場合、刑法の侮辱罪や名誉毀損罪により処罰されることもあります。また、民事上の名誉毀損による損害賠償請求も追うリスクがあります。​選挙運動は自由な意見表明の場ですが、他者の名誉や権利を侵害しないよう、冷静で慎重な情報発信を心がけましょう。


政治的・社会的信用の失墜

法律に違反して罰則を受けた場合、社会的な信用や信頼を大きく損なうことにもつながります。例えば、候補者であれば次の選挙での立候補が難しくなるだけでなく、支援者や政党との関係にも影響を及ぼすでしょう。

有権者であっても、SNS上での発言が問題視されると、職場や学校での評価に影響する可能性もあります。選挙は「社会の中での信頼」が問われる場面でもあります。ちょっとした投稿が、大きな代償を生むこともある。その意識をもって発信したいところです。

 

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まとめ

本記事では、SNSを活用した選挙運動に関するルールや注意点、違反した場合の罰則について詳しく解説しました。

選挙運動には公職選挙法という法律が関わっており、期間や手段、表現の内容によっては思わぬ違反となるケースもあります。特に、SNSは誰でも簡単に情報を発信できるからこそ、ルールを知らずに行動してしまうリスクがつきまといます。選挙に関心を持ち、積極的に関わること自体は大切なことです。そのうえで、正しい知識を持って、信頼を損なわない発信を心がけていきましょう。