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なぜ「暫定」ガソリン税は50年も続くのか?「おかしい」の正体と、税金の「からくり」を徹底解説

作成者: Admin|2025/11/19

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はじめに

「今月もガソリン代、高いなぁ」
給油のたに、ため息をついている方も多いのではないでしょうか。

レシートをよく見ると、ガソリン価格の約半分が「税金」であることに驚かされます。そして、その税金の中核をなすのが「暫定税率」と呼ばれるものです。

「暫定(ざんてい)」。
辞書を引けば「一時的な取り決め」とあります。

しかし、日本のガソリン税(揮発油税)にかかる暫定税率は、1974年(昭和49年)から、実に約50年もの間「暫定的に」続いてきました。

一時的なはずのものが、なぜ半世紀も続くのか?
「暫定なのにおかしい」という感覚は、まったくもって正しいものです。

この記事では、多くの人が抱くこの素朴な疑問の核心、すなわち「暫定」という言葉に隠された政治と税金の「からくり」について、徹底的に解き明かしていきます。

1. そもそも「暫定ガソリン税」とは何か?

この問題の根幹を理解するために、まず「暫定ガソリン税」の正体を知る必要があります。

正確には「暫定ガソリン税」という名前の税があるわけではありません。私たちが支払っているのは「揮発油税」と「地方揮発油税」という2つの税金です。

問題なのは、その「税率(税の割合)」です。

税率には、本来の法律で定められた「本則(ほんそく)税率」と、特別な事情で一時的に税率を変更する「暫定税率」の2種類があります。そして、ガソリン税は「本則税率」の上に「暫定税率」がドンと上乗せされています。

* 本則税率: 28.7円 / 1リットル
* 暫定税率: 25.1円 / 1リットル
* 合計(私たちが払っている税率): 53.8円 / 1リットル
(※これに「石油石炭税」と「消費税」がさらに上乗せされます)

お分かりでしょうか。私たちは、本来の税率とほぼ同額の「暫定的な」上乗せ分を、半世紀にわたって払い続けているのです。

なぜ「暫定」の上乗せが始まったのか?

この「暫定税率」が導入されたのは1974年。当時の日本は、第一次オイルショックの狂乱物価と、高度経済成長に伴う道路整備の遅れという二つの大きな問題に直面していました。そこで、田中角栄内閣は「道路整備」を大義名分として、法律(租税特別措置法)を改正します。

「日本の道路網はまだまだ不十分だ。緊急で集中的に整備する必要がある。だから、その財源を確保するために『暫定的に』税金を上乗せさせてほしい」.。このロジックで導入されたのが「暫定税率」です。そして、この税収の使い道を「道路の建設・維持・管理」に限定しました。これが、かつてよく耳にした「道路特定財源」です。

 

2. なぜ「暫定」が「永久」になるのか? 3つの「からくり」

「道路整備のため」という明確な目的があったのなら、道路がある程度整備されたら「暫定」は終わるはずです。しかし、現実はそうなりませんでした。なぜ「暫定」が「永久」に姿を変えてしまうのか。そこには、3つの巧妙な「からくり」が存在します。

法律の「期限切れ」という儀式

最大の「からくり」は、法律の仕組みそのものにあります。
暫定税率を定めている「租税特別措置法」は、普通の法律と違い、「この法律は〇年〇月〇日まで有効」という「期限」が設定されていました。

「期限が来たら、暫定税率は自動的に失効し、税金は安くなる」
そう、理論上は。

しかし、現実に何が行われてきたか。
それは、「期限が切れる直前に、国会でその『期限』だけを書き換えて延長する」という作業の繰り返しです。

「本法案は、租税特別措置法の期限を5年間延長するものである」

国会では、数年おきにこのような法案が提出され、与党の賛成多数で可決されてきました。国民の多くが知らないうちに、この「期限延長の儀式」が繰り返され、本来なら何度も消滅するはずだった暫定税率が、ゾンビのように生き延びてきたのです。

「暫定」とは「一時的」という意味ではなく、「数年おきに国会の承認(延長)が必要な税」という意味にすり替わってしまったのです。

「一度得た財源」は誰も手放さない

なぜ、政治家たちは「期限延長」という不人気な政策を繰り返すのでしょうか。
答えは単純で「あまりにも莫大なお金(財源)を生み出すから」です。

暫定税率による税収は、年間で約2.5兆円にも上ります。

* 国(財務省)からすれば、これほど安定的で巨大な税収は絶対に手放したくありません。
* 地方自治体も、この財源から配分される交付金(地方道路整備費など)がなければ、地域のインフラ維持が困難になります。
* そして「道路族議員」と呼ばれる政治家たちや、関連業界(建設業界など)にとっても、これは自分たちの影響力や仕事の源泉そのものです。

「道路整備」という当初の目的が薄れても、「一度確保した財源」は、多くの利権関係者にとって「絶対に失ってはならないもの」に変質します。

「暫定」をやめれば税金が安くなり国民は喜びますが、同時に、その2.5兆円に依存している多くの人々(特に政治的影響力の強い人々)が困るのです。このため、誰も「やめる」という決断ができませんでした。

大義名分の「すり替え」

「もう道路は十分できたじゃないか」という国民の批判に対し、彼らは「暫定」を維持するための「大義名分」を巧みにすり替えてきました。

「建設」から「維持・管理」へ
    「高速道路はできたが、しかし、今後は老朽化するインフラの『維持・管理・補修』に莫大な費用がかかる。だから暫定税率はまだ必要だ」

「都市」から「地方」へ
    「都市部の道路は良くても地方にはまだ必要な道がある。『地域の格差』をなくすために必要だ」

「道路」から「環境」へ
    「今後はCO2削減など『環境対策』にもお金がかかる。ガソリン税は環境負荷への課税(炭素税)としての側面もある」

このように、「暫定」を続けるための理由は、時代に合わせていくらでも後付けされてきました。

3.一度だけ「暫定」が終わった日(そして、すぐに復活した日)

この「からくり」が国民の前に露呈した歴史的な瞬間が、一度だけありました。
2008年(平成20年)のことです。

当時、福田康夫内閣(自民党)は、いつものように「期限延長」の法案を国会に提出しました。しかし、この時は「ねじれ国会」。野党・民主党が参議院で多数を占めていました。民主党は「暫定税率の廃止」を強く主張し、参議院で延長法案の採決を拒否し、その結果、2008年3月31日、租税特別措置法は「期限切れ」を迎え、暫定税率は本当に失効したのです。

翌4月1日、全国のガソリンスタンドで、ガソリン価格が一斉に約25円も値下がりしました。多くの国民が「やればできるじゃないか」「税金は安くなるんだ」と実感した瞬間でした。

しかし、この「安いガソリン」は、わずか1ヶ月で終わります。

与党(自民党・公明党)は、衆議院の「3分の2以上の賛成(再可決)」という強硬手段を使って、失効したはずの暫定税率を5月1日に「復活」させたのです。

この一連の騒動は、「暫定税率」が政治家のさじ加減一つで決まってしまうこと、そして、それを維持しようとする政治的な力が「国民の負担軽減」という民意よりも遥かに強いことを、全国民に示しました。

「暫定」が「特例」に変わっただけ

さらに、この話には「オチ」があります。
2009年、政権交代を果たした民主党は公約通り「暫定税率の廃止」を掲げます。

そして2010年、ついに「暫定税率」という仕組みは「廃止」され、これで税金は安くなる…と誰もが思いました。しかし、民主党政権が次に行ったことを見て国民は唖然とします。彼らは「暫定税率」を廃止するのと同時に、それと全く同じ「25.1円」を上乗せする「当分の間」の「特例税率」という新しい法律を作ったのです。

理由は「政権運営に必要な財源が、やはり足りないから」でした。

結局、「暫定」という名前が「特例」に変わっただけで、国民の負担は1円も変わりませんでした。さらに、「道路特定財源」という使い道の縛りも撤廃され「一般財源化」(何にでも使えるお金)されました。

これにより、「道路のため」という建前すらなくなり、単なる「税金取り」の仕組みとして、この高い税率は現在も残り続けているのです。

 

4. あなたの周りにもある?「暫定〇〇」の正体

この「からくり」は、ガソリン税に限らず「暫定」と名の付くものには全て注意が必要です。
ただし、「暫定」には2つの種類があります。

タイプA:本当に「一時的」なもの(消える暫定)

* 暫定予算:
  新年度(4月1日)までに本予算が成立しそうにない時、数週間~1ヶ月程度、必要最低限の経費だけを執行するための「つなぎ」の予算。本予算が成立すれば、即座に役目を終えます。

* 暫定政権:
  革命やクーデターなどで国が混乱した際、正式な選挙が行われるまでの間、一時的に行政を管理する政府。選挙の実施が最大の目的なので、選挙が終われば解散します。

これらは、「次の本番」までの「つなぎ」であり、「終わること」が目的となっているため、本当に「暫定」で終わります。

タイプB:「恒久化」するもの(消えない暫定)

* 暫定税率(ガソリン税など):
  今回のテーマ。一度始まると、それが「財源」となるため、既得権益化し、誰も手放せなくなります。

* 復興特別所得税:
  これも「暫定」の仲間です。2011年の東日本大震災の復興財源として始まりました。 当初は「25年間(2037年まで)」という「暫定」の予定でしたが、 しかし、最近の防衛費増額の議論の中でこの復興税を防衛費に転用し、さらに「延長」する案が出てきています。

  「復興のため」という大義名分で始まった税金が、「復興が終わっても」別の理由で「恒久化」しようとしている。まさにガソリン税と同じ「からくり」の構造です。「税金」や「お金」が絡む「暫定」は、ほぼ100%「恒久化」する。これが、私たちが学ぶべき歴史の教訓です。

5. まとめ:私たちが「おかしい」の声を上げ続ける理由

なぜ「暫定」ガソリン税は50年も続くのか?
それは、「暫定」という言葉が、国民の抵抗感を和らげるための「方便」であり、その実態は「数年おきに国会の承認を必要とする政治家にとって都合の良い恒久財源」だからです。

この「からくり」を知った上で、私たちはどうすべきでしょうか。

「どうせ政治家は変えてくれない」と諦めるのは簡単です。しかし、2008年に一度だけ、世論の力で「暫定税率」が失効した事実も忘れてはなりません。

私たちが「暫定なのにおかしい」「この税金は何に使われているんだ?」と声を上げ続け、選挙でその意思を示すこと。それこそが、この強固な「からくり」に立ち向かう、唯一の方法ではないでしょうか。

次にガソリンを入れる時は、その価格表示の裏にある、半世紀にわたる「政治のドラマ」と「税金のからくり」に、少しだけ思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

 

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