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なぜ議員宿舎は「安すぎる」のか?そのカラクリと知られざる「入居・退居」ルール

作成者: Admin|2025/12/01

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国会議員の「議員宿舎」。ニュースで家賃の安さが話題になることはあっても、その「存在理由」や「具体的なルール」は意外と知られていません。なぜこの制度が必要なのか? 都内在住の議員は入れないのか? そして、選挙に落ちたらいつ出て行かなければならないのか?

この記事では、そんな「議員宿舎」のからくりと知られざるルールについて徹底的に解説します。なぜ議員宿舎は「安すぎる」のか?そのカラクリと知られざる「入居・退居」ルールとは?

「国会議員は都心の一等地に格安で住める」
そんな話を聞いたことがあるでしょうか。それが「議員宿舎」と呼ばれているものです。特に有名なのは、赤坂や高輪にある議員宿舎で、新しく豪華な赤坂の宿舎(地上28階建て)は、約82平米の3LDKが十数万円という「破格」の家賃で提供されていると報じられ、たびたび世論の批判の的になってきました。

「なぜ、そんなに安いのか?」
「高給取りの国会議員を、税金で優遇するのはおかしい!」

そうした批判は、ごく当然の感覚です。
しかし、この制度には批判される「特権」としての側面と、民主主義を支える「必要性」としての側面が、複雑に絡み合っており、この記事ではその核心に迫りたいと思います。

 

1. なぜ「議員宿舎」は存在するのか?

まず、すべての基本となる「存在理由」です。
議員宿舎は、決して「議員への福利厚生」や「ご褒美」として作られたのではなく、日本の議会制民主主義を機能させるための「必要な装置(ツール)」として設計されたという建前があります。

理由は、大きく分けて3つあります。

1、「地元」と「東京」の二重生活の負担軽減

これが最大の理由です。
日本の国会議員は、全国の選挙区から選ばれます。北は北海道、南は沖縄まで全47都道府県から議員が東京の国会に集まります。国会(本会議や委員会)は、基本的に「平日ほぼ毎日」開催されます。

つまり、東京以外の選挙区(=「地元」)から選ばれた議員は、地元での活動と東京での国会活動という「二重生活」を余儀なくされます。もし議員宿舎がなければ、議員は自腹で地元の生活拠点(自宅)とは別に、東京(永田町周辺)にも生活拠点を確保しなければなりません。

ご存じの通り、国会周辺(赤坂、麹町など)の家賃は日本で最も高い水準です。もし、この高額な「二重の家賃」をすべて議員個人が負担することになればどうなるでしょうか?

●「お金持ち」しか議員になれない。
●資産家や多額の献金を集められる人でなければ立候補すらできなくなる。
●議員が「カネ集め」に走る(汚職の温床)
●生活費や家賃を稼ぐために政治活動が歪められる危険性がある。

議員宿舎は、こうした事態を防ぎ、「資力(お金)の有無に関わらず、志があれば誰でも国会議員になれる」という民主主義の理想を担保するための「セーフティネット」なのです。

2、職務の効率化と危機管理

国会会期中は、早朝の勉強会や深夜に及ぶ法案の審議、時には緊急の呼び出しもあります。議員が国会から離れた場所に住んでいると、こうした緊急の職務に迅速に対応できません。

また、大規模災害や国家的な危機が発生した際、国の意思決定を担う議員がバラバラの場所にいては、機能不全に陥ります。議員を「国会周辺」という一つのエリアに集め、安全(セキュリティ)を確保された宿舎に住まわせることは、国家の危機管理の観点からも重要だとされています。

3、「格安」である理由

ではなぜ「格安」なのか。
これは、議員宿舎が民間の賃貸マンション(=家賃収入で利益を出すもの)ではなく、「公務員宿舎」(=公務の円滑な遂行のために提供されるもの)と同じ位置づけだからです。

利益を出す必要がないため、家賃(正確には「使用料」)は、国家公務員宿舎の算定基準(建物の減価償却費や維持管理費など)を基に法律(国会議員宿舎法)で決められています。これが、周辺の「市場家賃(相場)」とはかけ離れた「安さ」の正体です。(※ただし、あまりに安すぎるとの批判を受け、近年は段階的に使用料が引き上げられる傾向にあります)

 

2. 都内の議員は入れないのか?

「存在理由」がわかると次の疑問の答えも見えてきます。
「地元が東京の議員は宿舎に入る必要がないのでは?」

その通りです。
議員宿舎法には、「国会への登院に著しく困難な不便があ」る議員に宿舎を「貸与することができる」と書かれています。

「原則禁止」というルール

この法律に基づき、衆議院・参議院の内部ルール(宿舎管理準則)で「東京都の区域」(島嶼部を除く)を選挙区とする議員、あるいは東京23区内に自宅がある議員は原則として入居できないと定められています。彼らは「国会に登院するのが困難」とは言えないというのが理由です。

「原則」があれば「例外」もある

これはあくまで「原則」であり、実際には、特例が存在します。

その1:空室がある場合
希望する地方の議員が全員入居しても、なお宿舎に空きがある場合。

その2:やむを得ない事情がある場合
「自宅がバリアフリーに対応しておらず、介護が必要な家族と宿舎に入りたい」
「セキュリティ上の懸念(ストーカー被害など)がある」
といった個別の事情が運営委員会(議員同士の話し合いの場)で認められれば、特例として都内の議員でも入居が許可されることがあります。

数としては少数ですが、「都内選出=絶対に入れない」というわけではなく、厳格な審査の上で「例外」が認められる余地が残されています。

 

3. 家賃はいくら? 宿舎の「格差」

議員宿舎と一口に言っても、実はいくつかの種類があり、その「快適さ」や「家賃」には格差があります。

① 赤坂議員宿舎(衆議院)

場所: 東京都港区赤坂(一等地)
特徴: 2011年完成。地上28階建てのタワーマンション型。
間取り: 3LDK(約82㎡)が中心。家族での居住を想定。
使用料(家賃): 約15万〜16万円(※執筆時点の目安)。
周辺の市場家賃(50万〜70万円)と比べ、圧倒的に安い。

② 高輪議員宿舎(参議院)

場所: 東京都港区高輪
特徴: 参議院議員向け。赤坂よりは古く、小規模。
間取り: 1LDK(約60㎡)など、単身・夫婦向けが多い。
使用料(家賃): 約10万〜11万円(※目安)。

③ 麹町議員宿舎(衆議院)

場所: 東京都千代田区麹町(国会に一番近い)
特徴: 築年数が非常に古く(1960年代)、老朽化が進行。
間取り: 1R(ワンルーム)や1Kが中心。いわゆる「寝るだけ」の単身者向け。
使用料(家賃): 数万円程度。

このように、新しく豪華な「赤坂」が批判の的になりがちですが、中には「安かろう、古かろう」の宿舎も存在します。国会議員は、当選回数や所属委員会などに関わらず、希望と空室状況に応じて、これらの宿舎に公平に(抽選などで)割り当てられます。

4. 落選したら、いつ退去?

これが最もシビアなルールです。
議員宿舎は、あくまで「国会議員」という「職務」のために貸与されるもので、選挙で落選したり、任期満了で引退したりして議員の身分を失えば当然、住む権利も失います。

では、その「猶予期間」はどれくらいなのでしょうか?

退去期限は「10日以内」が原則

各議院の規則では、議員でなくなった(=落選した)場合、その事由が発生した日から「10日以内に退去しなければならない」と定められています。

「選挙で負けたショックの中、10日で荷物をまとめて引っ越せ」というのは、非常に厳しいルールに聞こえますが、これは「公的な宿舎」である以上、仕方のないルールです。

「居座り問題」と「次の議員」

ではなぜ、こんなに厳しいルールがあるのか。
それは「次の議員」が待っているからです。

落選した議員が宿舎に居座り続けると、その選挙区で新た当選した議員(特に、それまで東京に拠点がなかった新人議員)が入居する部屋がなくなってしまいます。新人議員は、当選した直後から国会での活動準備(事務所開きや挨拶回り)に追われます。その新人が「住む家がない」という事態になれば、それこそ公務に支障をきたします。

落選議員の退去は、次の新人議員への「公務の引き継ぎ」でもあるのです。

過去には「居座り」も

とはいえ、過去にはこの「10日ルール」を守らず、数ヶ月にわたって退去しない元議員が「居座りだ」と問題になったケースも散発的にありました。「荷物が多すぎる」「次の住居が見つからない」といった理由でしたが、これらはもちろん通用しません。近年は、こうした問題が起こらないよう退去ルールの運用は非常に厳格化されています。

 

まとめ:それは「特権」か「必要経費」か

それでは議員宿舎の「からくり」をまとめたいと思います。

1、存在理由
地方議員の「二重生活」負担を減らし、お金持ち以外も政治に参加できるようにするため。また、危機管理上の必要性もある。

2、都内の議員
原則「入居不可」。国会への通勤が困難ではないためがだ、空室状況や特別な事情により「例外」もある。

3、家賃
「市場価格」ではなく「公務員宿舎」の基準で算定されるため格安になる。ただし、宿舎によって新旧の格差は大きい。

4、落選後
議員の身分を失った日から「10日以内」に退去するのが原則で、その理由は次の新人議員が使うため。

議員宿舎は、その「安さ」ばかりが注目され、「不公平な特権」の象徴のように語られがちですが、確かに都心の一等地に格安で住めることは一般国民の感覚からすれば「優遇」以外の何物でもないかもしれません。

しかし、その背景には、「全国から代表者を集める」という議会制民主主義の仕組みを、どうやって財政的に支えるかという極めて実務的な「必要性」も存在します。私たちが考えるべきは、「優遇はけしからん」と感情的に廃止を叫ぶこと(※仮に廃止すれば、政治家はますます金策に走るかもしれません)でもなく、「仕方ない」と無関心になることでもありません。

「その家賃(使用料)は本当に妥当な水準か?」
「その『必要性』は、今の時代(リモート化など)でも変わらないのか?」

特権と必要性の境界線はどこにあるのか。
そのバランスこそを、私たち有権者が厳しく監視し議論し続けることが重要なのではないでしょうか。

 

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