選挙の話になると、多くの方が最初に口にするのが「いったい、いくらかかるのか」という疑問です。選挙=お金がかかる、というイメージは広く共有されていますが、その中身については意外と整理されていません。
「とにかくお金がかかるから不安」「できるだけ安く済ませたい」「前回は思った以上に出費が膨らんだ」──こうした声は、現職・新人を問わずよく聞かれます。一方で、実際の選挙現場を見ると、お金をかけたから勝てるわけでも、かけなかったから負けるわけでもない、というのが現実です。
重要なのは金額そのものではなく、そのお金が何に使われ、どのような効果を狙っているのかです。本記事では、「選挙にかかるお金」を感覚ではなく構造で捉え直し、コストと効果の考え方を整理します。
選挙費用の話をすると、「今回は○○万円でやりたい」「前回より安く済ませたい」といった目標金額が先に出てくることがあります。しかし、この考え方には落とし穴があります。
なぜなら、選挙費用は単独では意味を持たない数字だからです。同じ100万円でも、「何に」「どのタイミングで」「どの層に」使ったかによって、結果は大きく変わります。
例えば、認知がほとんどない新人候補と、一定の知名度がある現職では、同じお金の使い方が最適とは限りません。にもかかわらず、「とにかく削る」「前例に合わせる」といった判断をしてしまうと、本来必要なところに資源が回らなくなります。
選挙費用は、「高いか安いか」ではなく、目的に対して妥当かどうかで判断する必要があります。
まず、選挙にかかるお金を大きく分けて整理してみましょう。細かい内訳は地域や規模によって異なりますが、構造は概ね共通しています。
●主に発生するのは、以下のような費用です。
●印刷物(ポスター、ビラなど)
●人件費・外注費(スタッフ、制作、運営補助)
●広告・発信関連(Web、動画、写真など)
●事務所・備品・交通費などの運営費
ここで重要なのは、「全部を同じ目線で削ろうとしないこと」です。例えば、印刷物は量を調整しやすい一方で、人件費や制作費は削りすぎると品質や継続性に影響が出ます。
費用全体を一括りにせず、「これは削っても影響が小さい」「ここは削ると効果が落ちる」という視点で見ることが大切です。
選挙において、「できるだけ安く済ませたい」という考え方自体は自然です。しかし、この発想がそのまま戦略になると、失敗につながるケースが少なくありません。
よくあるのが、「無料でできることだけをやる」という判断です。確かに、SNS投稿やボランティア活動など、お金をかけずにできる施策はあります。ただし、それらには必ず時間・労力・スキルという別のコストがかかっています。
結果として、候補者本人や限られたスタッフに負荷が集中し、継続できなくなるケースも多く見られます。安く済ませたつもりが、別の形で大きな代償を払っている、という状態です。お金を使うかどうかではなく、「どの負担をどこに置くか」という視点で考えることが重要です。
ここで、どぶ板選挙・空中戦・ハイブリッド戦略それぞれの費用の考え方を整理してみます。どぶ板選挙は、一見するとお金がかからないように見えます。しかし実際には、候補者本人の時間や体力、移動コスト、スタッフのサポートなど、見えにくいコストが積み重なります。
空中戦は、制作費や運用費といった分かりやすい支出が発生しますが、一度作ったコンテンツが繰り返し使えるという特徴があります。つまり、初期コストはあっても、スケールしやすい側面があります。
ハイブリッド戦略では、これらを補完的に使います。現場で得た情報をオンラインで活用することで、一つの活動が複数の効果を生む設計が可能になります。費用対効果を高める鍵は、この「重なり」を意識することです。
選挙費用を考えるうえで重要なのは、「支出=損失」と捉えないことです。すべてが投資になるわけではありませんが、少なくとも効果を期待して使うお金であるべきです。
例えば、発信の質を高めるための制作費は、「無駄な出費」ではなく、「信頼や認知を高めるための投資」と考えることができます。逆に、目的が曖昧なまま出した印刷物や企画は、投資ではなく消費になりがちです。
投資として考えるためには、「このお金で、何が変わるのか」を言語化できるかどうかが重要です。言葉にできない支出は、後から振り返っても評価ができません。
予算が限られている選挙は珍しくありません。その場合に重要なのは、「全部をカバーしようとしないこと」です。むしろ、一点突破の発想が有効になる場面も多くあります。
例えば、特定の地域や層に絞ってどぶ板を徹底し、その様子をオンラインで広げる。あるいは、発信テーマを絞り、繰り返し届ける。こうした設計は、少ない予算でも実行可能です。予算の大小よりも、「設計があるかどうか」。これは選挙費用を考えるうえで、最も重要なポイントです。
選挙にかかるお金は、避けて通れないテーマです。しかし、それを「怖いもの」「削るもの」として捉えてしまうと、本来得られるはずの効果を失ってしまいます。重要なのは、金額ではなく使い方です。どこに、なぜ使うのか。そのお金で何を変えたいのか。この視点を持つことで、選挙費用は単なる出費ではなく、戦略の一部になります。
どぶ板選挙も空中戦も、そしてハイブリッド戦略も、すべては設計次第です。お金は、その設計を実行するための手段に過ぎません。冷静に、構造的に選挙費用を捉えることが、結果につながる選挙への第一歩となるでしょう。
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