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選挙で立候補するために支払う供託金とは?没収ラインや選挙費用も解説

作成者: Admin|2025/07/02


 

選挙に立候補する際、「供託金」を納める必要があります。供託金制度はさまざまな法律に基づき運用されており、選挙の場合は公職選挙法で立候補者に供託金の納付が義務付けられています。しかし、選挙の供託金の金額は決して安くはなく、特に国政選挙では数百万円単位に達するため、立候補への高い心理的ハードルにもなっています。

本記事では、供託金の基本的な仕組みや金額、没収基準、返還条件などを詳しく解説します。あわせて、選挙にかかる全体的な費用の目安や供託金制度に対する課題についても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。

 

 供託金の概要 

供託金の納付は、選挙に立候補する際に必ず納めなければならない制度上の義務です。ここではまず、供託金の仕組みを詳しく見ていきましょう。

 

 

 供託金とは?  

供託とは、法律で定められた目的のため、一定額の現金や国債証書などを法務局などの供託所に預ける制度です。選挙の場合は、公職選挙法に基づき立候補の際に納めることが求められます。

選挙における供託金の納付は、当選を争う意思を持たず、売名や話題作りだけで無責任に立候補する人を防ぐ目的で設けられています。選挙で一定以上の得票があれば、供託金は全額返還されますが、規定の得票に達しない場合や、届け出後に立候補を辞退した場合には、供託金は没収され、国や自治体の財源に組み入れられます。

選挙における供託は、立候補者に本気で選挙に挑む覚悟があるかを問う制度とも言えます。なお、規定の得票を得た場合や無投票当選の場合は、供託金を返還請求できます。

 各選挙における供託額と没収基準の一覧  

供託金は選挙の種類ごとに金額や没収基準が細かく定められています。

詳しくは以下の表をご確認ください。

※1「市区」の「区」は、東京23区を指します。

参照:総務省|立候補を目指す方へ

 供託金の返還基準 

供託金は、立候補者が「一定の得票」を得られたかどうかで返還されるか没収されるかが決まります。衆議院小選挙区は有効投票総数の10%以上、参議院選挙区は8分の1(12.5%)以上で全額返還されます。都道府県知事選など地方選挙は原則10%以上が返還基準です。

一方、比例代表選挙では、没収額の計算式が定められており、供託額から「300万円×小選挙区の当選者数」と「600万円×比例代表の当選者数×2」を差し引いた残額が没収されます。この没収額は、政党の当選状況に応じて変動します。

では、実際の選挙ではどれくらいの金額が没収されているのか、事例を通して見てみましょう。

たとえば、2024年の東京都知事選挙では、過去最多の56人が立候補しましたが、得票率を見ると、小池氏が42.8%、石丸氏が24.3%、蓮舫氏が18.8%を獲得し、 この上位3名で有効投票の約85.9%を占めました。残りの53人はいずれも有効投票総数の10分の1(約10%)に届かず、供託金300万円は全額没収されています。没収総額は約1億5900万円にのぼりました。

供託金は、選挙に真剣に挑む人とそうでない人をふるいにかける実質的なハードルとして機能しています。供託金の返還基準をしっかり理解しないまま立候補すると、莫大な費用負担を背負うことになるため、候補者にとっては事前の入念な準備と戦略が欠かせません。

 没収された供託金の使い道 

没収された供託金がどこに行くのか、疑問に思う方もいるでしょう。

供託金は、一定の得票に届かなかった候補者から没収された後、国政選挙であれば国庫に、地方選挙であれば該当する自治体の歳入に組み込まれます。これらは一般財源として扱われ、特定の使い道が法律で細かく定められているわけではありません。国の予算や地方自治体の予算の一部として管理され、社会保障や公共インフラ、地域の行政サービスなど、広く公共の目的に充てられます。

つまり、没収された供託金は選挙に直接は還元されませんが、間接的に社会全体の運営に役立つ仕組みになっているのです。

 

 選挙における供託金制度の歴史と金額改定の流れ 

ここでは、選挙における供託金制度がどのように登場し、どのような経緯で現在の高額水準に至ったのか、その歴史と金額改定の流れを見ていきましょう。

選挙における供託金の歴史と導入の背景

選挙における供託金制度は、もともとイギリスで生まれた仕組みを手本に、日本でも1925年の普通選挙法の制定とともに導入されました。

それまでは一定額以上の納税義務がある男性にしか選挙権がありませんでしたが、普通選挙法により「すべての成年男性」に選挙権が与えられ、政治参加の裾野が一気に広がりました。この制度改正に伴い、立候補者の乱立や売名行為を防ぐための歯止めとして選挙において供託金納付が義務付けられるようになりました。当時の供託金は2000円で、これは当時の公務員初任給の約2倍に相当する金額だったといわれています。 

その後、公職選挙法に制度が引き継がれ、社会情勢や貨幣価値の変動に合わせて段階的に引き上げられてきました。

選挙における供託金制度における金額改定の経緯 

供託金が本格的に増額されたのは1970年代以降で、1992年の法改正では、衆議院小選挙区の供託金が一気に300万円に設定され、比例代表でも600万円と大幅に引き上げられました。これは、選挙公営制度の拡充による公費負担増を理由にしたものでした。

供託金の金額はその後も据え置かれ、現在に至るまで引き下げや没収基準の緩和は一度も行われていません。むしろ2022年には町村議会議員選挙にも新たに15万円の供託金が導入され、適用範囲は拡大しています。

これまで供託金引き下げ法案が提出されたこともありましたが、実現には至らず、供託金は今なお高額で維持され続けています。

 

 選挙における日本の供託金は世界的に見て高額なのか?  

選挙における供託金は世界の一部の国でも採用されていますが、日本の選挙における供託金は国際的に見ても突出して高額です。OECD加盟国の中で、供託金が立候補者個人に課される国は約10か国にとどまります。

その中で、日本の選挙における供託金は一人あたりの国民総所得(GNI)に対して約130%と、実質的に所得を上回る水準に設定されています。次いで高い韓国でも約40%で、日本との差は非常に大きいのが現状です。トルコやリトアニア、チェコなど他の国々では、供託金は国内平均月収と連動する制度が一般的で、金額負担は比較的軽く、没収ラインや返還条件も緩やかです。

さらに、カナダでは供託金が約10万円と低額で、収支報告を正しく提出すれば供託金が没収されない制度になっています。加えて、アメリカ・ドイツ・イタリア・フランスなど多くの主要国では、選挙における供託金制度そのものが存在せず、立候補に必要なのは有権者の署名を集めることが基本です。

国際的に見れば、選挙における日本の供託金は異例とも言える高水準であり、選挙制度の国際比較を踏まえると、現在の金額設定が妥当なのかについては、引き続き議論の余地がありそうです。

 

 選挙における供託金制度の課題 

選挙における供託金制度は選挙の健全化を目的としていますが、近年では制度のあり方に対する課題も指摘されています。以下で詳しく解説します。

憲法の平等原則に反すると指摘されている

選挙における供託金制度については、憲法が保障する平等原則に反するのではないか、という指摘が長年続いています。

憲法第44条では、公務員の選定は「財産によって差別されてはならない」と明記されていますが、選挙における供託金が高額であるため、経済的に余裕のない人は立候補自体が難しくなります。実質的に資金力の有無が立候補の可否を左右する現状は、「財産による制限」にあたるのではないかという憲法解釈がたびたび争われています。

過去には選挙における供託金制度の違憲性を問う裁判も複数行われましたが、最高裁は「乱立防止のため合理的」とし、現状を合憲と判断しています。しかし、合憲とされたのはあくまで制度趣旨を前提とした判断であり、金額が過剰に高額となれば、今後再び憲法判断が見直される可能性はあります。

実際、海外では選挙における供託金制度が違憲と判断された例もあります。フランスでは1995年に選挙における供託金制度を廃止し、財産による立候補制限は不適切と結論付け、有権者の署名要件など、別の立候補要件が設けられています。

ただし、日本と各国では憲法や選挙制度が異なるため、単純な比較や「違憲性」判断はできず、日本の憲法や社会状況に即した議論が今後も必要です。

 無所属が不利になる

選挙における供託金制度は、特に無所属候補にとって大きなハードルとなります。

政党所属の候補であれば、供託金を党が支援することもありますが、無所属や初出馬の候補者は全額自己負担となるケースがほとんどです。この負担は、資金力の少ない個人にとって極めて重く、結果として有力政党や知名度の高い候補に票が集中しやすい環境を生み出しています。

供託金は、立候補に対する参入障壁として機能しており、選挙の多様性を損なう要因の一つとなっています。

 供託金では売名目的の立候補を抑えきれていない 

選挙における供託金制度は、もともと「売名目的の立候補を防ぐ」という趣旨の一つで設けられましたが、現実には完全に機能しているとは言い切れません。

たとえば、2024年の東京都知事選挙では過去最多となる56人が立候補し、そのうち53人が没収基準に届かない得票に終わりました。この事例が示す通り、高額な供託金を支払ってでも、メディアへの露出や個人的な宣伝を狙う候補は一定数存在しており、供託金だけでは無責任な立候補を完全に防ぎきれないことが実証されています。

さらに、供託金の没収リスクを承知の上で、話題作りや選挙公報への掲載だけを目的にした立候補が後を絶たないことから、「供託金は高額であるにもかかわらず抑止力としては限界がある」という現実も浮き彫りになっています。

このように、選挙における供託金制度には制度趣旨と実態の間にズレが生じており、今後の制度改善が求められる分野のひとつと言えるでしょう。

 

 選挙に立候補する際に必要となる費用の目安とは?

選挙に立候補するには、供託金以外にも多くの費用が発生します。選挙の規模や準備期間によって金額は異なりますが、ここでは国政選挙・地方選挙それぞれの費用感を詳しく解説していきます。

 国政選挙にかかる費用の目安 

国政選挙に立候補する場合、まず必要なのが供託金です。衆議院小選挙区では300万円、比例代表では候補者1人あたり600万円が必要です。 しかし、これはあくまでスタートラインに過ぎません。

実際には、選挙事務所の設置、人件費、選挙カーの運用、ポスターやビラの作成、街頭演説の準備、広告費など、選挙活動に伴う支出は多岐にわたり、選挙期間中の主要経費だけでも、1,500万円〜2,000万円ほどの資金が必要だとされています。

一部の費用は、後ほどご紹介する「公費負担制度」で補助を受けることが可能ですが、すべてが公費でまかなえるわけではありません。特に選挙事務所の賃料や人件費、飲食費など、公費の対象外となる支出も多いため、最低でも800万円程度の自己資金は見込んでおく必要があります。

 選挙期間前の政治活動にかかる費用の目安 

選挙は、実質的に「選挙期間だけ」で勝負が決まるものではありません。選挙期間前の政治活動、いわゆる「地上戦」への投資が非常に重要です。

まず、地元での後援会活動や地域イベントへの参加、ニュースレターの発行、SNSやウェブサイトの運営など、日常的に活動の場を広げるための費用が発生します。地元に事務所を構え、スタッフを常駐させる場合には年間数百万円から数千万円単位の運営資金が必要になることも珍しくありません。

さらに、定期的なポスターの貼り替えや地域紙への広告掲載、支援者向けの会合費用などを加えると、選挙の前年からすでに1,000万円ほどの費用がかかるケースも多く見られます。選挙は「短期決戦」と言われますが、事実上の準備期間は何年にもわたるため、早期の資金計画が不可欠です。

 地方選挙にかかる費用の目安 

地方選挙は、国政選挙と比べると必要な費用は抑えられる傾向にあります。たとえば、市区町村議会議員選挙であれば、一般的に300万円から500万円程度が一つの目安です。供託金も政令指定都市で50万円、市区町村で30万円、町村議会では15万円と比較的低額で、ポスターの枚数や選挙カーの台数も限られているため、大規模な支出にはなりません。

ただし、人口規模や地元の慣習、事前活動の有無によっては、1,000万円以上かかるケースもあります。地方選挙も長期的な後援会活動を行うかどうかで、費用の総額は大きく変わってきます。

 法定選挙費用による支出上限 

選挙では、いくらでも資金を投入できるわけではありません。かつて、過度な金権選挙が社会問題となったことから、公職選挙法によって「法定選挙費用」という支出上限が設けられています。

たとえば、参議院選挙の比例代表では上限が約5,200万円、その他の国政選挙や地方選挙では有権者数に応じた計算式によって個別に上限が設定されます。 もし、この上限を超えて支出すると、候補者の出納責任者は刑事罰の対象となり、場合によっては連座制により当選そのものが無効になることもあります。

なお、法定選挙費用は「支出できる上限額」を示すものであり、この金額を必ず用意しなければならないという意味ではありません。選挙において重要なのは、多額の資金を投じることではなく、限られた予算の中でいかに効果的な戦略を構築できるかという点にあります。

供託金以外で必要となる主な選挙費用

供託金以外に候補者が負担する主な選挙費用としては、選挙事務所の設置費や家賃、スタッフの人件費が挙げられます。また、選挙カーのレンタル費用やガソリン代、運転手やウグイス嬢への報酬など、車両関連の出費も重要な項目です。

街頭演説に必要なマイクやスピーカーの設営費、会場費、選挙用のポスターやビラの作成、証紙の貼付作業にも相当なコストがかかります。

選挙は「供託金だけあれば戦える」と思われがちですが、実際にはこれら周辺費用のほうがはるかに大きく、準備不足や予算不足が勝敗を左右する大きな要素となります。

 公費負担制度の対象となる費用 

選挙には、公費負担制度という仕組みがあり、一部の選挙費用は自治体や国が負担してくれます。具体的には、選挙用ポスターの作成費、選挙カーの運転手・ウグイス嬢への報酬、選挙公報の作成・配布費用、選挙運動用ビラの印刷費などが対象です。

公費負担の上限は法定選挙費用の範囲内で決められており、たとえばポスターの掲示可能枚数や選挙カーの使用可能台数に応じて上限額が設定されています。

ただし、公費負担を受けるためには、一定の得票率を超える必要があります。このため、得票が基準を下回った場合には、これらの費用もすべて自己負担となる点はしっかりと覚えておきましょう。

 

まとめ

本記事では、選挙で立候補する際に必要な供託金の仕組みや金額、返還・没収の条件、制度の歴史、課題について詳しく解説しました。

選挙に立候補するためには、供託金をはじめ、相当な経済的負担を伴います。選挙における供託金は制度として一定の合理性を持ちながらも、国際的に見れば極めて高額であり、立候補の自由を制約している側面も否めません。

現行制度は候補者乱立を防ぐ手段として続いてきましたが、無所属候補には依然として大きな壁となり、売名目的の立候補も完全には防ぎきれていないのが現状です。選挙における供託金制度は今後、選挙の公正さと多様性をどう確保するかを考える上で、改めて議論すべき重要なテーマと言えるでしょう。

 

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