選挙戦において、最も多くの有権者が街に溢れている時間はいつでしょうか?
それは、朝の通勤時間と、「夕方から夜にかけての帰宅時間(17:00〜20:00)」です。特に冬場の選挙では、17時にはもう真っ暗で、この時間帯、照明設備が貧弱な選挙カーは、有権者からほとんど見えません。
闇夜から大音量の名前だけが聞こえてくる……これでは「不審車両」のように見えて今います。逆に、美しくライトアップされた選挙カーは、夜の街で強烈な存在感を放つ「動く広告塔」になります。今回は、音響以上に差がつく「選挙カーのLED照明」について、看板を光らせる手法から、顔色を良く見せる「光の色(色温度)」まで、徹底解説します。
かつてはハロゲンランプや蛍光灯が使われていましたが、現在は100% LEDにすべきです。理由は「明るさ」だけではありません。
● バッテリーへの負荷が「1/10」
前回の記事(音響編)でも触れましたが、選挙カーは電気が命です。従来のハロゲン投光器は消費電力が激しく、アンプと同時に使うとすぐに電圧が下がり、バッテリー上がりの原因になっていました。省電力なLEDにすることで、アイドリング停車中でも安定して明るさを維持でき、トラブルのリスクを激減させることができます。
● 虫が寄ってこない
意外と重要なのがこれです。ハロゲンや蛍光灯の紫外線には虫が猛烈に集まってきますが、LEDは虫が好む波長の光をほとんど出しません。演説中に候補者の顔の周りを蛾が飛び回る……という悲劇を防げます。
選挙カーの看板を光らせる方法は大きく分けて2つあります。
それぞれ予算と見栄えで選びましょう。
看板の上や下から、アームを伸ばしてLED投光器で照らす方法です。
●メリット:
設置が簡単で、コストが安い。自作(持ち込み)の選挙カーでよく採用されます。
●デメリット:
光にムラができやすい。アームの影が看板の文字に落ちてしまうことがある。対向車や歩行者にとって「眩しい」と感じさせることがある(グレア)。
看板自体を半透明のパネル(乳半アクリルなど)で作製し、内側にLEDを仕込んで光らせる方法です。コンビニの看板と同じ原理です。
●メリット:
圧倒的に美しい。 ムラなく全体が発光するため、文字がくっきりと読みやすく高級感が出ます。影も落ちません。
●デメリット:
看板の製作費が高くなる。専用の櫓(やぐら)が必要になることが多い。
予算が許すなら、間違いなく「行灯方式」をおすすめします。というのも、夜間の視認性と信頼感が段違いです。
LEDライトを買う時、「とりあえず一番明るいやつ」と選んでいませんか?
ここで重要なのは「色温度(ケルビン/K)」です。
まず「昼光色(6000K〜6500K)」のメリット・デメリットをご紹介してます。
※特徴は青白いキレのある真っ白な光です。
メリット:
文字の輪郭がハッキリ見える。遠くからの視認性が高い。「クリーン」「公正」なイメージを与える。
デメリット:
人の肌に当たると、青ざめて不健康(血色が悪い)に見えることがある。これを「幽霊照明」と呼びます。
続いて「昼白色(5000K)」または「電球色(3000K)」のメリット・デメリットをご紹介してます。
※特徴は少し自然な白、あるいはオレンジがかった温かい光です。
メリット:
肌の色を健康的に見せる。親しみやすさ、温かさを演出できる。
デメリット:
青白さに比べると遠くからのインパクト(輝度感)は少し劣る。
プロの推奨設定
●看板(文字):
クッキリ読ませるために「昼光色(6000K)」の白で飛ばす。
●候補者(顔):
もしスポット演説などで候補者を照らす場合は、少し温かみのある「昼白色(5000K)」や、演色性(CRI)の高いLEDを使って血色を良く見せる。
このように、看板と人物で光を使い分けるのが上級者のテクニックです。
「とにかく目立てばいい」と、爆光のLEDバーライトを全方向にむき出しで取り付けている車を見かけますが、これは非常に危険です。
「目潰し」は票を減らす
対向車のドライバーや、歩道を歩く歩行者の目に直接強力な光が入ると、視界が奪われます(グレア現象)。
「あの選挙カー、眩しくて事故りそうになった」というクレームは即座に悪評として広まります。
●角度調整:
投光器は必ず「下向き(看板方向)」に向け、水平や上向きには設置しない。
●拡散カバー:
光を柔らかく広げるカバー付きの製品を選ぶ。
昼間はただの白い看板でも夜になると光の演出で劇的に印象が変わります。仕事帰りの疲れた有権者が、ふと通り過ぎた選挙カーを見て、
「あ、綺麗な車だな」
「遅くまで頑張っているな」
と感じるその一瞬。そこには必ず「計算された照明」があります。
● バッテリーに優しいLEDにする。
● 可能なら「行灯(内照式)」で高級感を出す。
● 看板は白くクッキリ、周りには配慮を。
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